地主さんとまではいかなくてもそれなりに広い土地を相続した時におこりうる問題です。
事例
コインパーキングにしている土地を相続しました。
親がしていたコインパーキング経営などにも興味はなく、相続税の心配もあったので不動産会社に相談に行ったところ、思っていた以上に査定価格もでました。
「じゃあ、いっそ売ってしまおうか」
不動産会社より「駐車場にしておいたままよりきれいに造成して宅地にしましょう。あの土地でしたら4区画くらいにできますので、それぞれ買主さんをさがしましょう」
言われるままに駐車場をつぶして宅地に造成し土地を4区画にわける分筆登記もしてもらいました。ガス、水道もとおすように手配して、あとは4区画それぞれの買主さんがでてくることを心待ちにしていました。
ある日、お願いしていた不動産会社の担当者から電話がかかってきました。
(やっと買主がみつかったか)と思って喜んで電話に出たところ、出てきた言葉に絶句しました。
「宅建業法違反かもしれない?」
上記の話、どこがだめなのでしょうか。
自分の土地をどうしようが、誰に売ろうが誰に迷惑をかけるわけでもありません。ましてや詐欺などするつもりはありません。
次の買主さんの負担にならないように善意でガスや水道もとおしてあげたり、整地までしてあげたのです。
宅建業法の規定
宅地建物取引業とは「宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。」と規定されています。(宅建業法第2条第2項)
そして、この宅地建物取引業を無免許で行った場合には「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と罰則規定も設けられています。(宅建業法第79条第2項)
宅地建物取引業とは
しかし、宅地建物取引業とはどのような業務なのでしょうか。
この点について、宅建業法上ではあきらかにしておらず、国土交通省の定める「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に則って解釈をされます。
国土交通省の解釈・運用によると
「 本号にいう「業として行なう」とは、宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態を指すものであり、その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする」として、さらに5つの判断基準を定めています。
今回の事例ではそのうちの一つ、「取引の反復継続性」に該当する可能性が高いといえます。
取引の反復継続性とは宅地建物取引業、つまり不動産を売ったり買ったりすることをなんども繰り返し行うということです。
今回のように4区画に区割りをしたら4回売買をすることになります。
その点で宅建業法違反になる可能性もあるといえます。
ただ、上記の通り、国土交通省の解釈でも「その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする」としていますので、この点だけを抑えて宅建業法違反であるといえるかは判断しかねます。
ただ、じゃあ、2区画なら大丈夫なのか?3区画ならどうだ?と言われても明確な基準がないのが事実です。
そういう意味では区割りや上下水道の引き込みなどせずに、建売業者などに一括して全部売却してしまった方が宅地建物取引業としてはみられる可能性は低いといえそうです。
不動産を売却するにしても法令をよく知る不動産業者に依頼しなければあとで大変なことがおこるかもしれませんね。