遺言の中で遺言執行者が選任されている場合があります。
遺言執行者は特段資格が必要とるわけではありませんが、多くの場合、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家や銀行などの金融機関が選任されています。
また遺言執行者は遺言者の死亡後、家庭裁判所に申し立てることにより選任されることもあります。
今回は不動産を処分して相続人に分配するよう遺言に書かれていたケース(いわゆる清算型遺言)で遺言執行者が選任されていなかった場合と選任されていた場合と説明します。
遺言執行者が選ばれていない場合
遺言執行者が選ばれていない場合、相続手続きは法定相続人が協力して法定相続人全員名義に相続登記を行うこととなります。
そして、不動産を売却するにあたり法定相続人全員が売主になりますので、法定相続人全員で売買契約書に署名捺印、あるいは特定の相続人に売却手続きを委任することとなります。
つまり、①相続登記→②売買に基づく所有権移転登記と二つの手続きが必要となり、そのすべての手続きに相続人全員が参加する必要があります。
遺言執行者が選任されている場合
遺言執行者が選任されている場合でも登記手続きとしては①相続登記→②売買に基づく所有権移転登記とかわりはありません。
しかし、すべての手続きを遺言執行者が代理人として行うことができます。
つまり、遺言執行の手続きとして不動産の相続手続きも、売却にかかる売買契約の手続きも、さらに売却に伴う買主への所有権移転登記もすべて遺言執行者が相続人の代理人として行うことが可能です。
したがって、相続人が面倒な手続きに追われるということがありません。
まとめ
相続人が子だけで3名程度でしたら遺言執行者を選任していなくても手続きもスムーズにいく可能性が高いとはいえ、兄弟間の仲を考えると不安な点が出てくる人もいるでしょう。
また、子もなく、親もいない場合で兄弟姉妹が相続人になる場合など、相続人が多数に及ぶケースは遺言執行者を選任していたほうがいいでしょう。
特に高齢化社会である現在では相続人も高齢化しており、認知症の問題、あるいは、相続人がすでに亡くなっていて代襲相続が発生し被相続人からみれば甥姪も含むケースだと相続人が10名以上となることもまれにあります。
いずれにしても清算型の遺言を活用する場合には専門家を遺言執行者に選任しておいたほうが手続きはスムーズにいくことが多いといえます。