簡単にできる相続税対策③~二次相続を踏まえた相続~

今回も簡単にできる相続税対策について解説してします。今回は二次相続における相続対策について解説します。

二次相続とは

夫婦で財産を遺す際に、先に亡くなる方の相続を一次相続、後で亡くなる方の相続を二次相続といいます。
一次相続でどのくらい配偶者に財産を遺すかによって相続税の総額が大きく変わります。

パターン別二次相続のシミュレーション

夫婦で財産の総額が1億円、子どもが二人いる場合の相続税のシミュレーションをしていきます。

夫婦で5,000万円ずつ財産を保有している場合

夫婦で同じくらいの財産を保有している場合の相続税についてシミュレーションしています。

①法定相続割合で分けた場合
一次相続:10万円
二次相続:395万円
合計:405万円

②配偶者に全て相続させた場合
一次相続:0円
二次相続:770万円
合計:770万円

③子どもに全て相続させた場合
一次相続:20万円
二次相続:80万円
合計:100万円

夫が8,000万円、妻が2,000万円保有し、夫が先に死亡した場合

①法定相続割合で分けた場合
一次相続:175万円
二次相続:180万円
合計:355万円

②配偶者に全て相続させた場合
一次相続:0円
二次相続:770万円
合計:770万円

③子どもに全て相続させた場合
一次相続:470万円
二次相続:0円
合計:470万円

夫が8,000万円、妻が2,000万円保有し、妻が先に死亡した場合

①法定相続割合で分けた場合
一次相続:0円
二次相続:620万円
合計:620万円

②配偶者に全て相続させた場合
一次相続:0円
二次相続:770万円
合計:770万円

③子どもに全て相続させた場合
一次相続:0円
二次相続:470万円
合計:470万円

二次相続も考慮した配分が必要

ここまでご説明したとおり、夫婦の財産額や分け方でかなり相続税に差が出ます。
配偶者控除を利用することで一旦は相続税を0にすることができますが、二次相続で子供に大きな負担となることがあります。安易に配偶者に全ての財産を遺すのではなく、二次相続もふまえて配分を決めるようにしましょう。

相続発生後に配分を検討することは難しいため、できれば相続が発生する前に検討しておいた方が良いでしょう。
事前に検討しておくことであらゆるシミュレーションを事前に行なっておくことが可能です。
シミュレーションの結果、配分を決定したら遺言書を作成しておくことをおすすめします。
遺言書を作成しておくことで相続人は慌てずに財産を配分することができます。

簡単にできる相続税対策②~生前贈与~

今回は前回に引き続き簡単にできる相続税対策を解説します。今回は利用している方や検討している方も多い、生前贈与について解説します。

暦年贈与

最も多くの人が活用しているのが暦年贈与により、非課税の範囲内で贈与をすることです。暦年贈与での非課税枠は年間110万円です。受贈者一人につき110万円まで贈与をすることができますので、より多くの人に贈与をすることで早く財産を減らすことができ、結果的に相続税の節税につながります。

例えば、子どもが二人、それぞれの配偶者と孫が二人いる場合、年間に贈与できる金額は以下の通りです。

①子どものみに贈与する場合:220万円(110万円×2名)
②子ども+孫に贈与する場合:660万円(110万円×6名)
③子ども+孫+子どもの配偶者に贈与する場合:880万円(110万円×8名)

上記のとおり、人数を多くすればするほど、1年間に贈与できる金額が大きくなります。

③のケースで5年間贈与をし続けた場合、4,400万円もの資産を減らすことができるため、かなり節税になります。

贈与の特例を利用する

暦年贈与以外にも子や孫などに贈与をできる制度があります。特例について具体的に解説します。

教育資金贈与の特例

教育資金贈与の特例は孫などに、一括で1,500万円まで非課税で贈与ができる制度です。
教育資金贈与は信託銀行などで、金銭信託として預け、教育資金として使用した領収書などを提出し、出金することができます。
教育資金贈与の特例は一括で1,500万円と高額の贈与ができるため、短い期間で大きな効果を生むことができることや、まだ若い孫などが無駄遣いする心配がないため、メリットも大きい制度です。
教育資金贈与とは別に暦年贈与で贈与をすることも可能です。

住宅取得資金贈与の特例

住宅取得資金贈与の特例はマイホームを購入する18歳以上の子や孫に贈与をした際に非課税になる制度です。
耐熱等性能や耐震基準が一定以上の省エネ等住宅の場合は1,000万円、省エネ住宅以外の場合は500万円まで非課税で贈与をすることが可能です。
贈与を受けた年の翌年の2月15日から3月15日の間に税務署に申告を行う必要があります。手続きがわからない場合は税理士に相談するようにしましょう。

贈与は計画的に

贈与は簡単に節税できる有効な手段ですが、贈与をし過ぎることによって自分の生活費が無くなってしまっては意味がありません。
超高齢化社会となっており老後の医療費なども試算して計画的に贈与を行うようにしましょう。

簡単にできる相続税対策①~生命保険~

相続対策にはさまざまなものがあります。相続対策の中には簡単にできるものもあれば、知識が必要なものやリスクがあるものもあります。
今回は誰でも簡単にできる相続対策である生命保険のメリットや注意点について解説します。

生命保険の3つのメリット

生命保険は相続対策において3つの大きなメリットがあります。生命保険のメリットを具体的に解説します。

非課税枠を活用できる

生命保険には非課税枠があり、相続税対策として有効です。
非課税枠は法定相続人×500万円です。非課税枠を活用することで、相続税の負担を減らすことができますし、基礎控除と生命保険の非課税枠の合計の範囲内であれば、相続税の申告も必要ありません。

受取人を指定できる

生命保険は死亡保険金をあらかじめ指定することができます。
特定の相続人に多く財産を遺したいと考えている場合、生命保険の受取人に指定することで、調整することが可能です

相続発生後すぐにお金を使うことができる

金融期間に預けている預貯金などは相続発生後、遺産分割協議などの手続きを経てからでないと出金することができません。
生命保険であればあらかじめ受取人を指定しているため、すぐに出金することができます。
配偶者の当面の生活資金を確保したい場合などに有効です。

生命保険を契約する際の注意点

生命保険にはメリットもありますが注意点もらあります。こんなはずじゃなかった・・・とならないように注意点も確認しておきましょう。

解約をすると元本割れすることがある

生命保険は契約後、すぐに解約をすると元本割れする商品がほとんどです。
生命保険の契約をする際は商品の内容を理解することと、使う予定が無いか、よく確認してから契約するようにしましょう。

受取人を指定することで揉めることもある

生命保険は受取人を指定することで、特定の人に財産を遺すことができますが、生命保険を特定の人に遺すことでかえって揉めることもあります。
資産全体の配分を決めておきたい場合は遺言を作成しておきましょう。

生命保険は円建てと外貨建てがある

生命保険は円建ての商品と外貨建ての商品があります。
円建ての生命保険は利回りは高くありませんが、為替リスクはありません。
一方でドルや豪ドルなど外貨建ての生命保険は
利回りは高いものの、為替リスクがあり、円高になると損をしてしまう可能性もあります。
それぞれのメリットとデメリットがありますので、商品内容を理解して契約するようにしましょう。

相続で揉めるのはこんなケース④ ~疎遠な相続人が相続権を主張しているケース~

今回も相続について揉めやすいケースについて解説していきます。今回は疎遠な相続人が相続権を主張しているケースです。

 

疎遠な相続人が相続権を主張してくるケースになりやすい家族構成

どのような家族構成の時に疎遠な相続人が相続権を主張してくるのでしょうか。主なケースについて見て行きましょう。

配偶者と兄弟または甥姪

相続人が配偶者と兄弟または甥姪の場合、配偶者にすべての財産を遺すことに決めている方も多いでしょう。しかし、法定相続割合は配偶者に4分の3、兄弟姉妹や甥姪に4分の1です。兄弟姉妹や甥姪の中には被相続人とは疎遠でほとんど連絡を取っていなかった人もいるケースがあります。

疎遠な人でも権利を主張すれば、財産を相続することができるため、権利を主張する人も多いものです。配偶者に全ての財産を遺す場合は遺言書などで指定する必要があります。

兄弟または甥姪のみ

相続人が兄弟または甥姪のみの場合も揉めるケースが多いです。兄弟姉妹や甥姪の中には兄弟姉妹で一緒に住んでいるケースや甥姪は子どものように普段から介護をしているケースもあります。一方で年賀状だけのやり取りの場合や連絡先を知らないケースもあるでしょう。

このような場合でも普段から接している甥姪と連絡先も知らない甥姪は同じ相続の権利を持つため、同じ財産をもらうことになります。

疎遠な人にはあまり残さずに、財産を相続させたい場合には事前に遺言書を作成しておく必要があります。

不動産がある場合は特に注意が必要

疎遠な相続人が相続権を主張しているケースでは不動産があるケースで揉めやすくなります。

特に配偶者と兄弟姉妹または甥姪が相続人となるケースでは、自宅の不動産の価値が高い場合、配偶者が自宅の不動産しか相続できず、金銭はすべて甥姪が相続することになってしまうケースや、最悪の場合、自宅不動産を売却しなければ法定相続割合通りに財産を配分できないこともあります。

疎遠な相続人がいる場合、協議に時間がかかる

疎遠な相続人が相続権を主張していなかったとしても、遺産分割協議には時間がかかります。財産を相続する気が無いとしても、金融機関など様々な書類に署名・押印してもらう必要があります。

遺産分割協議をすする際に疎遠な人がいるとなかなか会う事も難しく、連絡先もわからないと言うケースもありますので、時間がかかります。特に相続税の申告が必要な場合は10ヶ月以内に申告と納付を終わらせる必要がありますので相続手続きに早めにとりかかるようにしましょう。

相続で揉めるのはこんなケース③ ~相続人のうち一人が介護をしているケース~

前回に引き続き相続で揉めやすいケースについて解説します。今回は相続人のうち一人が介護をしているケースについて解説します。

 

相続人のうち一人が介護をしているケースで揉めやすい理由


相続人のうち一人が介護をしているケースでは被相続人と相続人のうち一人が頻繁に接触しているという状況になります。
そうなると、よく会っている相続人に財産を遺すことを生前に約束するケースもあるでしょう。このようなケースでは遺言書が作成されていれば良いのですが遺言書が作成されていないケースでは口約束だけの効力がない約束がかえって揉め事のもとになることがあります。
また、介護をしている相続人は寄与分が認められ、当然に多く財産を相続できると考える方も多いと思います。
しかし、寄与分は通常子供に期待される程度の介護では認めらないことも多くあります。お金のために介護をしているわけではありませんが、寄与分が認められずがっかりする相続人も多いでしょう。介護を受けている側も介護をしてくれる人に財産を多く遺したいと考えているのであれば、遺言書や生命保険で財産を多く遺せるようにしておかなければいけません。

相続人のうち一人が介護をしているケースで特に注意が必要なケース


どのようなケースでは特に注意が必要なのでしょうか。特に注意するべきケースを具体的に解説します。

相続人のうち一人が同居しているケース

相続人のうち一人が同居しているケースでは自宅を同居の相続人が相続するケースが多いでしょう。
その場合、金融資産をどう分けるかという問題があります。自宅を相続したから金融資産は少なくて良いと考えるか、あくまで自宅は別で金融資産を3分の1ずつにしたいと考える人もいます。人それぞれ考え方が違うので注意が必要です。

資金援助をうけているケース

住宅取得資金や孫への教育資金など多額の生前贈与をしているケースもあります。このようなケースでは、介護をしていても資金援助を受けている相続人が周りの相続人から見ると財産を多くもらい過ぎていると感じるケースもあります。

相続人主導で遺言を作成したケース

相続人主導で自分に遺言を作成するケースもあります。介護をしている相続人は被相続人と接する機会が多いため、他の相続人に比べて自分が主導して遺言を作成してもらいやすいでしょう。
相続人のうち一人が遺言の作成に関わると、他の相続人から見ると遺言者の意思が反映していないようにも見えます。遺言の作成することを相談されたとしても、あくまで遺言者の意思を尊重する必要があります。

相続で揉めるのはこんなケース② ~生前贈与をしているケース~

前回に引き続き、相続で揉める可能性が高いケースについてご紹介します。

今回は生前贈与をしているケースです。生前贈与は相続税対策として有効な手段ですが、配分のバランスについても検討する必要があります。今回は生前贈与の特例を交えてトラブルになるケースをご紹介します。

孫の数によって差がでる教育資金贈与の特例

教育資金贈与の特例とは教育資金の贈与であれば、一括で1,500万円の贈与が非課税になる制度です。贈与された資金は信託銀行などの金融機関で信託され、教育資金として使っていくことができます。

教育資金贈与の特例を利用することで孫一人につき1,500万円まで贈与することができるので、課税対象財産を大きく減らすことができます。一方で、孫の数によって不公平が生じる可能性があるため注意が必要です。

子どもが二人で、それぞれに孫が1人と孫が3人いるケースでは、最大限贈与をした場合、3,000万円もの差がでます。

人によっては贈与と相続は別ものと考えて、贈与を受けた分は考えずに相続財産を配分するべきだと考える人と、贈与は相続の前渡しであって相続の時に調整するべきだと考える人もいます。

贈与者が亡くなった後になると贈与者自身がどう考えていたかわからなくなりますので、贈与が原因で揉めることもあるのです。

住宅取得資金贈与の特例

住宅取得資金贈与の特例はマイホーム購入時の費用を援助する制度で、最大1,000万円まで非課税で贈与をすることができます。

子どもが二人いるケースで一人がマイホームを購入し特例を利用して贈与を行い、もう一方が賃貸に住んでいるケースでは、一人だけが贈与を受けた状態になります。

さきほどの教育資金と同じように贈与をした分を相続とは別ものと考えるか相続の前渡しであると考えるかによって相続が発生した際にトラブルになる可能性があります。

贈与によってバランスが崩れる際は遺言の作成を

家族構成やライフスタイルによって生前贈与の金額に差が出る場合も多くあります。贈与によって揉めることは避けたいものですが、節税対策としては有効な手段です。

贈与によって相続人間のバランスが崩れる場合は遺言の作成を検討してみるとよいでしょう。生前贈与をしたことでバランスが崩れてしまっても、相続時に揉めないようにしておけば、問題がないケースも多いです。

事前に相続人ともよく話し合って、遺言書を作成しておくことで相続人も納得して相続することができるでしょう。

相続で揉めるのはこんなケース① ~中途半端な遺言がある~

相続ではちょっとしたことがきっかけで揉めることがあります。今回は中途半端な遺言があることで、かえって揉めることが多いケースと対処法を紹介したいと思います。

法律上の要件は満たさない、偏った配分の遺言

遺言では民法で定められた要件があり、日付の記載や署名、捺印が必要となるなどの要件があります。法律上有効な遺言とはなりません。法律上有効な遺言でなくても、被相続人の意思をくみ取れることができれば、その通り配分することも珍しくありませんが、偏った配分の遺言であった場合は特に注意が必要です。

例えば、子ども二人で一方に有利な遺言であった場合、不利な立場の子どもは遺言が無効であると訴える可能性が高いでしょう。

相続人間で偏った配分とする場合は確実に有効な遺言を遺すことが特に重要になります。公正証書で遺言を作成しておくなど、しっかりと法律上の要件を満たす遺言を作成するようにしましょう。

遺留分を侵害している

配偶者や子どもには最低限財産を相続できる遺留分があります。遺留分は遺言を作成しても侵害することができません。遺言で遺留分を侵害することで、遺留分を請求することになり、かえって相続人間の関係が悪化する可能性があります。遺留分を請求する可能性がある人の遺留分は侵害しないように遺言を作成する必要があります。

財産の一部についての遺言しか書かれていない

遺言書では財産の一部のみ遺言を記載することができます。そのため、預貯金や株式のことを一切書かずに、不動産のみ相続する人を指定する遺言も有効な遺言書となります。

しかし、不動産のみ相続する人を指定している遺言の場合、預貯金や株式等の金融資産を不動産を相続しない人を優先して遺すつもりだったのか、不動産を相続するための相続税の支払いや今後のメンテナンスをするための資金として不動産を相続する人に引き継いでほしかったのかがわかりません。

一部のみ記載する遺言も有効ではありますが、全財産について配分を指定した方がよいでしょう。

予備的な内容が書かれていない

予備的な内容とは財産を遺そうと考えている人が先に亡くなっている場合にどうするかを書いておくことです。例えば、被相続人が亡くなったら自宅は配偶者に遺す内容の遺言を作成している場合で、配偶者が先に亡くなっていると誰に遺すかが決められていない状態になります。

予備的な遺言を記すことで、相続人が先に亡くなっている場合にどのように財産を配分するかも明確にすることができるので、スムーズに配分することができます。

相続手続きで困ること④ ~事務手続きが難しい~

今回も相続手続きで困ることについて解説したいと思います。今回は金融機関の事務手続きについて解説します。

金融機関の相続手続きは複雑

金融機関の相続手続きは非常に複雑です。金融機関に必ず提出する必要があるのが、被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍です。戸籍を確認しなければ、相続人を確定することができませんので、必ず必要となります。

各金融機関にすべて戸籍謄本の原本を提出する必要がありますので、多めに取得しておくか、それぞれの金融機関でコピーしてもらう必要があります。

戸籍の提出と合わせて各金融機関所定の用紙に記入して提出する必要があります。各金融機関で形式が異なるうえに、細かい不備も金融機関は許してくれませんので、何度も書類をやり取りすることも多いです。

事務手続きで困るケース

どのようなケースで事務手続きに困ることが多いのでしょうか。ケース別に解説していきます。

相続人が海外にいるケース

相続人が海外にいるケースでは書類のやり取りも国際郵便でやり取りする必要があるため、時間がかかります。海外に相続人がいるケースでは早めに手続きを進める方が良いでしょう。帰国した際に遺産分割協議や記入が必要な個所は記入しておくとよいでしょう。帰国前に他の相続人と協力して準備しておく必要があります。

相続人が平日休みがとれないケース

金融機関は平日しか空いていないため、平日に全く休みが取れない方はなかなか相続手続きが進みません。郵送で手続きを進めることができますが、不備があったら何度もやり取りをすることになり、時間がかかります。

被相続人の金融機関の取引が多いケース

相続が発生すると金融機関ごとに手続きを進めていく必要があります。取引している金融機関が多いと金融機関ごとに手続きを進めていかなければいけません。戸籍を郵送で提出する場合も戸籍を送付し、コピーして返送してもらうということを繰り返すことになるため、非常に時間がかかります。

相続人が多いケース

金融機関の手続きは取引き金融機関ごとに相続人全員が署名捺印が必要となります。相続人が多いと、返送が遅れる人や書き間違える人も出てきますので、なかなか手続きが進まないケースが多いです。

手続きが進まない可能性がある場合は早めに準備を

上記のように手続きが進まない可能性がある場合は、早めに準備をするようにしましょう。特に相続税がかかりそうな場合には相続発生から10ヶ月以内という短い期間で手続きを進めていく必要があります。

相続手続きで困ること③ ~相続人の中に認知症の人がいる~

今回も相続手続きで困ることについて解説していきます。

今回は相続人の中に認知症の人がいる場合について解説していきます。

 

相続人の中に認知症の人がいると何が困る?

相続人の中に認知症の人がいると相続手続きがなかなか進みません。認知症の方がいると意思表示をすることができないため、遺産分割協議が成立しません。

また、金融機関の複雑な書類に記入することも難しいでしょう。

相続人の中に認知症の方がいるケースは?

相続人の中に認知症の方がいるケースはどのようなケースが多いか解説します。

まず多いのが配偶者が認知症になっているケースでしょう。配偶者は被相続人と年齢が近く、高齢となっている場合が多くあります。ただし、銀行の実務では意思表示がすることが難しくても、相続人である子ども全員が相続放棄し、配偶者が相続することを認めれば相続手続きを完了させることは難しくありません。

一方で、本当に困るのは兄弟姉妹が相続人のケースです。配偶者がいる場合は財産の多くを配偶者が相続するケースがほとんどですが、兄弟姉妹の中に認知症になっている方がいると手続きが滞ることが多いです。

被相続人名義の財産で生活していた場合は早くお金を出せる状態にしないと生活に困窮する可能性もあるため、手続きを早く進める必要があります。

相続人の中に認知症の人がいるケースの対処法は?

相続人の中に認知症の人がいるケースでは、通常の手続きに加えて、認知症の人の代わりに意思表示をする人を選定する必要があります。その方法としては2つあります。

一つ目の方法は特別代理人を選定する方法です。家庭裁判所に申請し、相続手続きに関する特別代理人を選定します。他の相続人は利益相反しますので、特別代理人になることはできません。弁護士や司法書士など法律の専門家に依頼することが多くなります。

もうひとつの方法が成年後見人の手続きをするという方法です。成年後見は相続手続きだけでなく、あらゆる法律行為をすることができる法定代理人です。

成年被後見人が不要な契約をした場合にも取り消すことができますので、今後の生活のことを考えて成年後見人の手続きをしておいてもよいでしょう。

ただし、成年後見人の手続きをすると、毎年家庭裁判所に生活費の使用状況などを提出するなど負担も大きくなりますので注意が必要です。

特別代理人の手続きや成年後見の手続きは時間がかかりますので、通常の相続手続きよりも早めに準備をする必要があります。

相続手続きで困ること②~相続人間で合意形成できない~

前回に引き続き相続手続きでどのようなことで困るのか、シリーズで解説していきます。今回は相続人間で合意形成できないケースについて解説します。

相続人間で合意形成できないことが多いケース

どのような状況になると相続人間で合意形成できないケースが多いのでしょうか。パターン別にみていきましょう。

相続人が兄弟姉妹、甥・姪のケース

相続人が兄弟姉妹、甥・姪のケースでは合意形成がすることが難しいケースが多いです。

まず問題となるのが、人数の多さです。兄弟姉妹が亡くなって甥・姪に代襲している場合、相続人が10人を超えることもあります。人数が多く、関係も薄い場合は集まることや話し合うことも難しく、遺産分割について合意ができないケースが多いです。

財産の大部分を不動産が占めているケース

預貯金などの金融資産は相続人が均等に分けることが容易にできます。しかし、不動産などの現物資産は分けることが難しく、共有にしたとしても相続後に様々なトラブルに発展するケースがあります。

不動産は金融資産よりも分けにくいため、トラブルに発展しやすい資産です。

相続人のうち一人に介護などの負担が偏っていた場合

子どもが複数いる場合などで、相続人のうち一人が介護などの負担を一人で担っていた場合、財産も多くもらえると考えがちです。しかし、法定相続割合はあくまで均等ですので、介護によって負担があったため、多くもらうということは他の相続人との話し合いによって決めなければいけません。

介護などの負担は経験者にしかわからないことが多く、他の相続人も納得できないケースも多くあります。

相続人のうち一人が多額の贈与を受けていた場合

相続人のうち一人が多額の贈与を受けていた場合も他の相続人が不公平と感じることが多く、トラブルになることが多いです。住宅取得資金のための贈与で差がつく場合や孫への教育資金贈与では孫の数によって差がつくことがあります。

トラブルを避けるためには遺言の作成で対策を

上記のようなケースに該当する場合は遺言を作成することをおすすめします。相続人間でトラブルになるケースでは、被相続人は「こう思っていたはずだ」と相続人間で主張しあうケースが多くあります。

被相続人がどのように考えていたのかを明確に意思表示できるのが遺言書です。遺言を作成することで生前に被相続人がどのように考えていたかを示すことができるので、相続人間のトラブルを避けることができます。

相続手続きで困ること①~取引金融機関がわからない~

相続手続きの途中でなかなか前に進めずに困っている方は本当に多いです。今回からシリーズで実際に相続手続きでどのようなことに困っているのか紹介します。

第一回は「取引金融機関がわからない」について解説します。

 

意外と取引金融機関はわからない

被相続人がどのような金融機関と取引しているかは意外とわからないものです。どのようなケースで金融機関の取引がわからないことが多いのかと対処法について解説します。

被相続人との関係が疎遠な場合

被相続人との関係が疎遠なケースでは、金融機関との取引が分からないケースが多いです。例えば、親が被相続人の場合で実家に頻繁に出入りしている場合は、通帳や証書をどこに保管しているかわかるケースが多いでしょう。

しかし、兄弟や叔父・叔母が被相続人の場合、普段自宅に出入りすることがないため、大切な書類を保管している場所が分からないケースが多いでしょう。

このようなケースでは相続発生後に届く郵便物をくまなくチェックすることで、ある程度金融機関が判明します。

金融機関によっては定期的に郵送物を送ってくることがありますので、郵送物が送られてきたら金融機関に取引があったかどうか確認するようにしましょう。

ネット銀行やネット証券で取引している場合

ネット銀行やネット証券は通帳や証書などがなく、送られてくる郵送物も少ないため、身近な家族でも取引が分からないケースが多いです。場合によっては家族に内緒でへそくりをためているケースも少なくありません。

このようなケースも非常に取引金融機関を探すことは難しいでしょう。このようなケースではインターネットのお気に入りやスマホのアプリ、メールを確認することをおすすめします。ネット銀行やネット証券からはメールで取引の確認やキャンペーンの案内が届くことが多く、メールが見られるのであれば、金融機関からメールが届いていないか確認してみましょう。

生前に財産目録を作っておくと便利

亡くなってから被相続人の取引金融機関がわからないと相続人は苦労して探すことになります。そうならないために、生前に財産目録をつくっておくと便利です。

財産目録とは金融機関名や支店名、おおよその残高を記しておくもので、相続発生後に財産目録を参考に相続手続きをすすめることができます。

財産目録には金融機関だけでなく、不動産や生命保険などあらゆる資産をのせておくようにしましょう。評価額もあわせて記載しておくことで、遺産分割協議の参考になりますし、相続税の概算もすることができます。

不動産が「負」動産??

 

相続の遺産というと預貯金や有価証券そして不動産などを思い浮かべます。

しかし、相続財産の中には借金などの負債なども含まれていますので、相続するかどうかどのように分配するかは慎重に決める必要があります。

 

ただ、不動産と言ってもいい不動産もあればそうでない不動産もあります。

 

今回は意外と多い相続した不動産の悩みについてお話します。

 

田舎の不動産を相続してしまった

都市部にお住まいの方の中で親の不動産を相続したというご相談を受けます。

 

どうやら相続した不動産が田舎の不動産で中には田畑などの農地や山林なども含まれているようです。

 

将来的に田舎に戻るのであればいいのですが、そうでない場合は維持・管理が大変です。ただ、最近は各自治体で空き家バンク等、賃貸や売買をあっせんしてくれる制度もあります。

 

しかしながら、処分や賃貸もうまくいかないケースの方が多いのは確かです。

 

住んでいた両親が近隣の方々とお付き合いがある場合や親族が近くに住んでいる場合は家屋や田畑の手入れをしてもらえる場合もありますが、そうでない場合、自身で維持・管理をしていかなければなりません。

 

古い家屋だったら倒壊の危険もあります。そうなる前に補修あるいは解体するにしてもいずれにしても費用がかかります。

 

また、都市部と違ってそこまで高額であるとは言えませんが、毎年の固定資産税も納付しなければなりません。

 

自治体は助けてくれないか??

ご相談をいただく方の中には自治体に寄付をしたいという方もいらっしゃいます。

しかし、よっぽど文化財的に重要であるとかなら別ですが、寄付するといっても受け取ってもらえる自治体は少ないといえます。

 

理由は簡単です。自治体としても処分に困るからです。

 

それならば受け取らないで毎年の固定資産税を所有者に支払ってもらっていたほうが自治体としては助かります。

 

困っている方は意外と多い

このように空き家や土地の問題は実は数多くあります。では、相続登記をしない方がいいのかというと、そうではありません。

 

相続登記をきちんとしておかずに放ったらかしにしていると次世代、次世代に相続は受け継がれ、どんどん相続は複雑になっていくからです。

 

少し話は外れますが、日本全国に所有者がどこにいるかわからない所有者不明土地が全国で約410万ヘクタールの面積を占めると推計されています。これは367.5万ヘクタールの九州本土を大きく上回る面積です。

 

この結果は相続を放置した結果も少なからず原因となっていると思われます。

 

実際のところ不動産と言っても同じものが何一つないので画一的にこうするのが正解という答えを出すことができないのが実情です。今後も増え続ける大きな問題の一つだと思われます。