高齢化社会の日本において相続も同様に高齢化が進んでいます。
90歳前後で亡くなることも多く、相続人である兄弟姉妹も90歳前後、そして被相続人の子どもも70代や60代ということがあります。
2020年のある調査によると、65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%。
65歳以上の6人に1人が認知症有病者であるそうです。その数は実に約602万人だそうです。
ご存知の通り、認知症にも程度があります。
日常の生活に支障なく、財産管理なども問題なく行える程度の軽度のものから、それらが自分一人ではむずかしい重度の認知症まで、さまざまです。
財産の管理などが難しい場合は、成年後見制度の利用が求められることになります。
相続人の中に成年後見人がいたら?
相続人の中に成年後見人がいる際は、手続きなどはどのようになるのでしょうか。
成年後見人の役割
成年後見人の役割は、成年被後見人の財産を管理することです。これは家庭裁判所の監督のもと行われます。
成年被後見人が相続人の一人となった際には、その成年被後見人に代わって遺産分割協議に参加をし、また様々な手続きを代わりに行うことになります。
不動産の名義変更や、銀行に預けている預貯金の解約などは成年後見人が成年被後見人に代わって手続きをします。
通常であれば預貯金等の解約では相続人全員の署名・実印押捺及び印鑑証明書の添付が求められます。
しかし成年被後見人である相続人に代わって成年後見人が署名や押捺、そして成年後見人の印鑑証明書を添付することとなります。
原則、本人の財産を少なくするような措置は不可
ここで大切なポイントをお伝えします。
現在の家庭裁判所の方針では原則、「本人の財産を少なくするような措置は不可」です。
これはどういうことかと言いますと、勝手に相続分の放棄ができないということです。
ただし、本人に多額の財産などがある場合などは、家庭裁判所も臨機応変に対応を検討してくれるケースもあるといいます。繰り返しになりますが、原則は相続分を確保するということが必要です。
相続登記はどうなる?
相続した不動産の名義変更(登記)や売却も同様の扱いです。
「 登記名義人」に成年被後見人である相続人がなる際は、成年後見人が手続きを代行します。
これからの相続
日本社会の高齢化の流れの加速度はますます高まります。それにともなって相続の高齢化問題もより顕著になるでしょう。
認知症の罹患率も上昇することが容易に想像できますので、今から相続について考えておくことは、決して時期早々ではありません。
そんな高齢化が進む日本の相続事情、これからますます成年後見制度がフォーカスされることでしょう。
老いは誰しもに平等に訪れます。今から相続対策を進めましょう。私のブログが誰かの相続を考える一つのきっかけになれば幸いです。
ただ、現在の成年後見制度も多くの問題点が残っているのが現状です。
より柔軟な成年後見制度の運用が今後必要となります。