相続手続きにおける行方不明者の取り扱い

今回は相続人に行方不明者がいる時の相続手続きについて説明したいと思います。

 

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行方不明なんてめったにない様なことに思えますが、令和元年の警察庁発表のデータで年間で86933人です。

 

これは届出が受理された人数ですので、実際にはもっと沢山の数字が予想されます。

 

事件絡みの行方不明ではなくても、家族関係のもつれや、借金等で行方が分からなくなる人も多数考えられます。

 

 では推定相続人が行方不明の場合はどのように相続手続きすれば良いのでしょうか?

 

行方不明者がいる時の相続手続き

 

過去の記事でも何度も記載していますが、遺言がない場合は相続人全員による遺産分割協議が必要になります。

 

でも相続人が行方不明では、遺産分割協議ができません。

 

行方不明にも様々なパターンが考えられますが、一つ目は住所が不明の場合です。

 

これが戸籍の附票を取得することで、判明することがあります。

 

戸籍の附票は本籍地の戸籍と共に管理されているもので、その戸籍に加入してからの住所の移動がすべて記載されているものです。取得するには本籍地のある役所に請求することになります。

 

住民票との違いは住民票はどこの場所に住んでるか分からないと請求先すら分かりませんが、戸籍は本籍地が移動してなければ、他親族等の本籍から分かることが多いので、請求ができないことがほとんどありえません。

 

本籍地を変更せずに、住所を移転した場合、戸籍の附票を取得すれば、行方不明者の住所が分かる可能性があります。

 

しかし行方不明の人が住民票を移動してるとは限りませんし、その住所地に住んでいるとは限りません。

住民票移動しないで居住場所を変えている人は沢山います。

 

その場合次の手はどうなるでしょうか?

 

不在者財産管理人の申立ての制度があります。

 

家庭裁判所に不在者(行方不明者)の代わりに、遺産分割協議してくれる代理人の選任を申し立てることです。

 

無事に選任された不在者財産管理人が選任されると行方不明者に代わって、不在者財産管理人が遺産分割協議をすることになります。

 

その結果相続手続きを進める事ができることになります。

 

不在者財産管理人制度を使う際の注意点

 

ただ注意点としては、この不在者財産管理人の代理権の範囲は制限されていますので、相続人間で特定の相続人に相続財産を相続させたくても、出来ない可能性があります。

 

法定相続分通りに不在者に相続させる遺産分割協議をしないと、裁判所からOKがでないことが多いかもしれません。もちろん色々裁判所と話す事はできますが、他の相続人の意図通りに協議することは簡単にはいきません。

 

不在者の従来の住所または居所(生活してたと思われる場所)を管轄する家庭裁判所に利害関係人が申し立てることで、不在者財産管理人の選任の審判が始まります。

 

上記の不在者財産管理人の選任の申立てで、相続手続きは完了すると思いますが、ここまで手続きするのも大変ですよね。

 

戸籍の附票を取得と簡単に行っても、本籍地が遠方にあれば、郵送で取得することになりますが、郵送の場合は定額小為替をいう現金代わりの証書を使うことになります。

 

・定額小為替はどこで買えるのか?


・本籍地はどうやって調べるのか?

・戸籍の附票は誰が請求できるのか?

 

など知識がないと一から調べないといけません。

 

まして、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをするなんて、もっとハードルが上がると思います。

 

裁判所のHPから必要書類を抜粋すると、下記の様になります。

・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)

・不在者の戸籍附票

・財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票

・不在の事実を証する資料

・不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)

・利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),賃貸借契約書写し,金銭消費貸借契約書写し等)

 

かなり難しいことが分かって頂けると思います。

 

今は大丈夫でも相続が発生した時に、家族がどのような状態にあるかは、誰も分かりません。

 

相続手続きで大変な思いや苦労をしない為には、遺言書の作成が一番の対策になることはご理解いただけるかなと思います。