遺言の書き方~予備的遺言の必要性と活用方法~

今回は予備的遺言について説明してきたいと思います。

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予備的遺言とは何か?

遺言を作っておきましょう。相続トラブルを回避するために!など、遺言の重要性が年々高まったきています。

遺言を作成するには様々なルールがあります。

遺言を作成する上での形式面のルールであったり、遺言に使う文言のルールなどがあります。

その中でも比較的重要なのが、予備的遺言のルールになります。

 

例えば、「妻にすべての財産を相続させる」という遺言を作成しました。

妻に相続させて、妻の生活を安定させたい。

子供達は成人して結婚もしてるし、財産はいらないだろう。

兄弟間では仲があまり良くないから、しっかり遺言を作って、みんなで話し合う必要性をなくして、円満な相続にしたい。と思い上記の様な遺言を作成したとします。

何にも問題はない様にみえますし、遺言を作るなんてとても立派なことです。

 

でも実はこの遺言には一つ落とし穴があります。

それは妻より先に遺言者が亡くなるとは限らないことです。

いくら年齢が遺言者の方が上でも、どちらが先になくなるかは分かりません。

こればかりは誰にも分かりません。

 

もし妻が先に亡くなってしまったらこの遺言はどうなるでしょうか?

遺言の効力は発生しません。

どういうことかというと、遺言の効力は遺言者が死亡した時に、発生します。

そのため、遺言者よりも先に相続財産をもらう予定だった人、今回の例では妻が先になくなってしまうと、その部分の遺言の効力は発生しないのです。

結果、相続財産は子供達が相続することになり、財産をどのように分けるか遺産分割をしないといけなくなるのです。

 

元々妻の老後のことを考え、子供たちの仲があまり良くない為、遺産分割協議をしないようにする為に、遺言書を作成したのですが、遺言の効力が発生しないため、結局仲の悪い兄弟間で遺産分割をしなくてはいけなくなってしまいました。

本当にもったいない話ですし、遺言を作成した意味がありません。

ではどのようにすればこのような事態を回避できたのでしょうか?

それが予備的遺言の活用になります。

予備的遺言とは読んで字の如く、予備的に作成する遺言になります。

予備的に作成と言っても、遺言を2通作るわけではなく、同じ遺言内で作る事になります。

 

例えば先ほどの遺言の例の場合だと、

「妻にすべての財産を相続させる。妻が遺言者より以前に死亡した時は、○○の財産は長男へ、○○の財産は長女へ相続させる。」

の様に、もしもの事態に備えて相続先を指定しておくことを予備的遺言といいます。

 

この様に遺言書を作成しておけば、不測の事態が起きた時にも、相続トラブルを回避できる可能性が高くなります。

まずは一番望む相続の形で遺言書を作成し、仮に亡くなる順番が前後してしまった時に、望む相続の形を遺言書に記載しておくことが重要になってきます。

むしろ予備的遺言が入っていない遺言は、リスクの高い遺言になります。

 

特に夫婦間で財産を相続させる遺言を作る場合などは、年齢も近いことが大半ですので、どちらが先に亡くなってもトラブルが発生しない形で遺言書を作成するのが望ましい遺言の形になります。

夫婦共に遺言書を作成して、どちらが先に亡くなっても良い様に、お互いが遺言書を作るのがベストな方法だと思います。

 

他にも遺言で財産をある団体に寄付するなどした場合も、その団体が遺言の効力発生時に消滅していたりする可能性もあります。

寄付する理由は様々だと思いますが、仮に寄付の理由が家族に財産を残さない方がトラブルにならないと考えての結果だとすると、せっかく遺言作ったのに、意味のないものとなってしまう可能性があります。

 

もちろん予備的遺言を作ったとしても、予想できないことが起きている可能性は0ではありません。

そうだとしても、年齢の近い人との間での相続、または法人などに贈与する時などは、出来る限り予備的な遺言を考えて、作成するのが無難な選択肢になってくると思います。