前回はジュニアnisaは相続税対策に有効なのか、メリットは何なのかということを解説しました。
今回はジュニアnisaの利用時の注意点や相続税対策に使える贈与の特例などをご紹介します。
ジュニアnisaを利用するときの注意点
ジュニアnisaには投資の利益が非課税になるなどのメリットもありますが、同時に利用の際に注意したいポイントもあります。
注意点に気をつけて使わないと孫や祖父母はジュニアnisaを使ったことを後悔するかもしれません。
利用に際しては以下の注意点も理解して、ジュニアnisaの利用がデメリットにならないかよく考えて活用することが重要です。
ジュニアnisa利用の際の注意点は4つあります。
ジュニアnisaは基礎控除の範囲内の贈与である
贈与税には年110万円という基礎控除の枠があります。
基礎控除の範囲内であれば贈与税の課税は原則的にありません。
ジュニアnisaの枠は年80万円です。
ジュニアnisaの枠が年80万円あるわけだから、基礎控除と合計して年190万円(贈与税基礎控除とジュニアnisaの枠の合計額)があると思うかもしれません。
違います。
ジュニアnisaを使っても贈与の非課税枠が190万円になるわけではないのです。
ジュニアnisaはあくまで贈与税の基礎控除110万円の範囲内で行いますので、ジュニアnisaを使えば贈与税の基礎控除枠はジュニアnisaの分だけ減ってしまいます。
あくまでジュニアnisaは投資運用の利益が非課税になるという制度です。
孫が特に株式や投資信託の運用をしないのであれば、別にジュニアnisaである必要はありません。
ジュニアnisaはあくまで贈与税の基礎控除枠を使った贈与である点に注意が必要になります。
ジュニアnisa口座は原則的に変更できない
ジュニアnisa口座には金融機関の変更は基本的にできず、口座数にも制限があります。
まずジュニアnisaは1人1口座という制限があるのです。
ひとつの金融機関にジュニアnisaの口座を作って「別の金融機関がよかった」となった場合でも、原則的に金融機関や口座を自由に変更できません。
ジュニアnisa口座の変更自体は絶対に不可能というわけではないのですが、変更の場合は作成したジュニアnisa口座を閉鎖して別の金融機関に作り直さなければいけません。
ジュニアnisa口座を閉鎖すると遡って税金の課税があるため注意してください。
すでに運用している投資信託などはジュニアnisaの口座に移管できません。
合わせて注意が必要です。
ジュニアnisaでは損失が発生するリスクがある
祖父母が孫に相続税対策として年80万円ずつの贈与を行ったとします。
ジュニアnisa口座を使って投資信託や株式などで投資運用した場合は損失が発生する可能性があるため注意が必要です。
株式や投資信託などは値動きします。
投資運用しても必ず元手が増えるわけではなく、反対に減って損をする可能性もあります。
ジュニアnisaを使って祖父母が孫に贈与しても、投資運用の状況によってはせっかくの贈与財産が減ってしまい、孫や祖父母にとって残念な結果になる可能性があるのです。
ジュニアnisaを使って孫に贈与する場合は、株式や投資信託の価格変動リスクについても理解したうえで行う必要があります。
ジュニアnisaは2023年に新規口座開設が終了する
ジュニアnisaは2023年に新規口座開設の終了が決まっています。
相続対策として使う場合は新規口座開設終了や今後のジュニアnisa関係のニュースや情報に注意したうえで使う必要があります。
ジュニアnisaは20歳になれば一般のnisa口座に移すことも可能です。
ジュニアnisa制度終了までに20歳にならない場合でも、そのまま20歳まで非課税のまま所持できます。
ジュニアnisa口座新規開設終了にともない手続きが発生する可能性もあります。
これからジュニアnisaを相続税対策で利用しようと考えている場合は合わせて注意してください。
相続税対策にも使える贈与税の特例
孫子に財産を渡したい場合や相続対策したいケースでは、贈与税の特例と比較してジュニアnisaを使うことが重要です。
子供の年齢によってはジュニアnisaが使えない場合や、そもそもジュニアnisaでは贈与額が足りないケースもあります。
贈与したい額や相続税対策に望むことや贈与の目的などに合わせて以下のような特例も検討してみてはいかがでしょう。
教育資金一括贈与による相続税対策
祖父母や父母などが孫子に教育資金を一括贈与する場合、特例の条件に当てはまっていれば非課税になります。
非課税の枠は最大で1,500万円です。
結婚・子育て資金の一括贈与による相続税対策
孫子が20歳以上の場合は結婚や子育てに充てる資金を一括贈与した場合の非課税の特例があります。
孫子の結婚や子育てのための費用を一括で贈与した場合は、最大で1,000万円まで贈与税が非課税になるのです。
住宅取得資金の贈与による相続税対策
父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得を目的とした資金の贈与を受ける場合に使える贈与税の特例です。
住宅取得資金の贈与の特例条件に当てはまっている場合は最大3,000万円までの贈与税が非課税になる特例になります。
贈与税の非課税枠を使った相続税対策
ジュニアnisaの相続税対策の仕組みそのものは、生前贈与により相続財産を減らすことによって相続税を減らす、あるいは相続税の基礎控除内に収まるようにすることです。
生前贈与により相続財産を減らしたいのであれば特にジュニアnisaにこだわる必要はありません。
贈与税の非課税枠である年110万円の範囲内で贈与を行うという方法もあります。
まとめ
ジュニアnisaは口座内で投資運用した利益が非課税になる制度です。
枠は年80万円ですが、この枠は贈与税の非課税枠と別にもらえるわけではなく、贈与税の非課税枠内に含まれます。
祖父母が「孫に財産を渡したい」「相続税対策したい」という場合で孫が投資したいなどの事情が特になければ、あえてジュニアnisaでなくてもよいという結論になります。
贈与税には相続税対策に使える特例がいくつもあるのです。
専門家に相談のうえで贈与税の特例なども比較検討し、ニーズに合った相続税対策をしてはいかがでしょう。