不動産相続登記の現場

相続が発生した際の手続きの山場である相続登記(不動産の名義変更)の現場をお伝えしていきます。

故人の遺産の中に不動産があった場合のケースになります。

f:id:megabankdiary:20200505162401j:plain

相続登記は絶対必要?

義務ではありません。

義務ではないの意味は、相続登記しなくても、罰則等があるわけではいということです。

これは相続登記に限らず、不動産登記のすべてに言えることです。

では相続登記しない場合は、どんなデメリットがあるのでしょうか?

デメリットその1.故人の名義のままでは、売却や賃貸等、処分がしづらい

故人の不動産を誰も使わないから、売却しようと思い、買い手が見つかったとしても、名義が故人のままでは売買をして、買い手に名義を移すことができません。

デメリットその2.相続関係が複雑化する

亡くなった父所有の不動産を、名義変更せずにそのままにしていて、今度は長男や長女が亡くなったとします。

するとどうでしょうか?

この不動産は誰が所有しているのでしょうか?

そして名義変更できるのでしょうか?

所有者は相続関係次第ですし、名義変更は可能です。

ただとても複雑な相続登記になってくるので、時間、費用共にかかってきます。

相続登記の必要書類

実際に相続登記する際に必要になる書類を見て行きましょう。

・被相続人(故人のこと)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

※厳密には相続登記の場合は、生殖年齢(10歳前後)からで可能と言われてますが、銀行等金融機関では出生から求められる場合が多いです。

・相続人の現在戸籍

・被相続人の住民票の除票

・不動産を相続する人の住民票

・遺産分割協議書

・相続人全員の印鑑証明書

・固定資産評価証明書

上記は遺言がなく、遺産分割協議で不動産を相続する人を決めた場合の書類です。

それ以外には、法定相続分通りに相続する場合や、遺言書がある場合、遺産分割調停等で相続する人が決まった場合など、不動産を相続する人が決まった過程により、必要書類が変わってきます。

文章にすればこれだけですが、一般の方がこれらの書類を全部集めるのは、骨の折れる作業になります。

相続人が多数になる場合

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議をして、誰が被相続人の財産を取得するか決めることが通常になります。

父、母、長男、長女の人家族で、父がなくなった場合の推定相続人は、母、長男、長女の3人になります。

上記のように、相続人が少なく、親子関係の中だけで、相続人が決まる場合は手続きも比較的楽ですが、例えば次の家族の場合などはどうでしょうか?

相続人多数の家族例(数次相続、代襲相続ありの例)

奥さんは以前に死去。子供はいない。兄弟が被相続人以外に5人。
兄弟の内、3人は以前に死去。

亡くなった兄弟3人にはそれぞれ、甥姪が2人ずつ。甥姪の内の1人も、相続発生後、相続登記する前に死去。

亡くなった甥には妻と子供が2人いる。

上記の様な親族構成の場合、相続人は何人になるでしょうか?

答えは10人になります。

内訳は被相続人の兄弟で生存している2人。亡くなった兄弟の子供である甥姪で、生存している5人。

そして亡くなってしまった甥の妻と子供2人で3人。

合計すると、2+5+3で10人になります。

相続関係を証明するには?

上記の相続関係を証するにはどれくらいの手間がかかるでしょうか?

証明する事柄
  • 被相続人が死亡したこと
  • 奥さんがすでに死亡していること
  • 子供がいないこと
  • 両親が死亡していること
  • 兄弟が6人であること
  • 兄弟の内2人が生存していること
  • 兄弟の内3人が死亡していること
  • 亡くなった兄弟の甥姪が生存していること
  • 甥の一人が相続発生後に死亡していること
  • 亡くなった甥の家族が妻と子供2人であること
上記を証明する戸籍
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍
  • 被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍
  • 生存している兄弟の現在戸籍
  • 死亡した兄弟の出生から死亡までの戸籍
  • 甥姪の現在戸籍
  • 亡くなった甥の出生から死亡までの戸籍
  • 亡くなった甥の妻・子供2人の現在戸籍

結局何通必要になるか分かりません。

骨の折れる作業になることは想像できると思います。

その上で、10人の相続人全員に遺産分割協議書に署名、押印してもらい、印鑑証明書を提出してもらうという作業が必要になります。

そして上記に記載した他の必要書類を集めて、登記申請書を作成して、法務局に提出することになります。

遺産分割協議書の書き方、登記申請書の書き方なども調べて、必要事項を記載しないと、相続登記はできません。

このように相続の現場では、相続人の親族構成により、とても複雑な相続になる場合も多々あります。

ちなみに、相続例で説明した相続人10人のものは、私が仕事の中で経験した相続例を、簡易化したものになります。

実際は相続人が27人という実例でした。

まとめ

相続はとても複雑になるケースも多々あります。

今回挙げた例に加えて、相続人が未成年、認知症、行方不明、外国在住など、様々なことが考えられます。

相続を複雑にしない為には、やはり遺言書が一番大切になってきます。

大切な家族に負担をかけないためにも、相続の知識を少しずつ学んでみて下さい。