「遺留分」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
もしかすると、過去に相続を経験したことがある人でも、遺留分について良く分からない…という人もいるでしょう。
しかし、遺留分は割と重要な制度なので、相続人(相続を受ける人)は「遺留分」という言葉の意味と仕組みは知っておいた方が良いです。
今回は、そんな遺留分についてお話します。
遺留分は法定相続人を守る制度
遺留分は、法定相続人に認められている最低限の遺産取得分のことであり、相続人を守る制度です。
ちなみに、法定相続人とは法律で「相続人」と定められている人のことです。
相続が発生したとき、法定相続人は法定相続分…つまり法律に従って遺産を相続するのが一般的です(遺産分割協議をする場合もありますが)。
たとえば、相続人が配偶者と子供2人の場合、法定相続だと配偶者1/2・子供1/4・子供1/4が取り分です。
しかし、遺言がある場合は法定相続よりも基本的には遺言が優先されるので、法定相続人なのに「遺産をもらえない」という状態になりかねません。
このようなケースで、法定相続人は「遺留分」を主張し、最低限の遺産を守る(受け取る)ことができるのです。
遺留分は遺言でも侵害不可能
先ほどのように、遺留分は法定相続人の最低限の遺産を守るための制度です。
そのため、たとえば遺言書で遺留分を否定するような内容が書いてあっても、遺留分の確保が優先されます。
しかし、厳密にいうと遺言書に「遺留分を侵害する内容」を記載することは可能であり、その内容通りに相続されることがあります。
どういうことかというと、遺留分を主張するためには「遺留分侵害額請求」を行う必要があるのです。
遺留分侵害請求とは?
遺留分侵害請求とは、遺留分を主張することであり、遺留分侵害請求をしない限り遺留分の遺産をもらうことはできません。
遺留分侵害請求は、内容証明郵便を作成して、遺留分を侵害している人に郵送します。
たとえば、夫が遺言で「愛人に対して全ての遺産を相続する」と記載した場合、法定相続人である妻が、自分の遺留分を主張するために愛人に内容証明を郵送する…というイメージです。
また、遺留分侵害請求は相続を知った日から1年以内に行う必要があります。
遺留分侵害請求は弁護士に任せた方が良い
遺留分侵害請求は自分でもできますが、以下の理由で弁護士に任せた方が良いでしょう。
・内容証明を作成すること自体難しい
・相手との交渉をリードできる
・最悪訴訟の準備もスムーズ
・感情的にならないで済む
このような理由があるので、弁護士に任せてしまうことをおすすめします。
遺留分の割合は決まっている
次に、遺留分の割合の話です。
遺留分は割合が決まっており、その割合は法定相続の割合よりも小さいです。
というのも、相続人が遺留分を主張するということは、先ほどのように被相続人(亡くなった人)が不公平な遺産分配を遺言書に記載したときでしょう。
しかし、言い換えるとその分配比率が被相続人の「最期の希望」であり、それを完全に無視するわけにもいきません。
そのため、相続人を守るために遺留分という制度を用意しておくものの、被相続人の意志を尊重するために遺留分の割合は法定相続より小さいのです。
具体的には以下の通りです。
・直系尊属人のみが法定相続人:1/3
・上記以外:1/2
上記に該当しないケース…たとえば、兄弟・姉妹だけが法定相続人の場合には遺留分は認められません。
つまり、兄弟・姉妹は遺留分を主張できないので、被相続人の遺言書の内容通り相続されるということです。
直系尊属人のみが法定相続人のケース(遺留分1/3)
まず、直系尊属人とは親や子供のことです。
たとえば、Aさんが亡くなり、法定相続人がAさんの子供2人だとします。
しかし、Aさんは「愛人に全財産(1億円)を相続する」という遺言書を残したとします。
そのとき、子供2人が遺留分を主張すれば、1億円のうち1/3を受け取ることができます。
そのため、子供1人当たり「1億円×1/3(遺留分)×1/2(子供2人なので)=約1,666万円」が遺留分となります。
つまり、本来であれば1人5,000万円相続できたものの、遺留分のみの相続なので約1,666万円まで減額されるということです。
それ以外のケース(遺留分1/2)
先ほどと同じケースで、法定相続人が配偶者(直系尊属人ではない)のみだったとしましょう。
この場合、遺留分は「1億円×1/2(遺留分)=5,000万円」を遺留分として相続することができます。
本来であれば1億円を相続することができましたが、5,000万円に減額されていることが分かります。
このように、あまりハッピーな制度ではありませんが、遺留分という制度がある点は覚えておくと良いでしょう。