相続税の納税と不動産~納税資金準備~

 

 

相続税は亡くなられてから10か月以内に申告と納付をしなければなりません。

 

相続税の納税は原則として現金でする必要があります。

 

物納は簡単にできる??

不動産や有価証券等で納税する物納という手段もありますが基本的に物納は無理だと考えていたほうがよいでしょう。

 

延納によっても金銭で納付することを困難だというような特段の事情がある場合に納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として一定の相続財産による物納が認められています。

 

つまり非常に限定的であるといえます。

 

また、物納ができる順番も法律に定められています。

 

<第1順位>

1 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。)

2 不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

 

<第2順位>

3 非上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。)

4 非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

 

<第3順位>

5 動産

 

となっています。資産価値が高く現金化しやすいものから物納が許されます。

 

このように物納は簡単ではなく、納税資金を生前にきちんと準備することが必要です。

 

相続税対策はお早めに

ただ、生前と言ってもただ生きていればいいというわけではありません。高齢になればなるほど、認知症などになる可能性が高くなり、認知症になってしまえば簡単に売却することができないからです。

 

つまり、認知症になり判断能力がないと認められると家庭裁判所に成年後見人の申し立てをする必要があり、成年後見人等の関与及び家庭裁判所による監督のもと財産管理をする必要がでてきます。

 

不動産などの高額な資産を売却するには家庭裁判所への相談が必須となり、居住用の不動産の売却である時には家庭裁判所へ許可の申し立てが必須となります。

 

また、家庭裁判所の現在の監督方針では基本的に財産管理については現状維持という点を一番に考えています。そして、納税資金対策で不動産を売却したいといっても「相続税の納税はあくまで本人のためではなく相続人のためですので認めない」という考えをされる場合があります。

 

ご自身で生前、特に元気なうちから、相続税がいくらくらいかかるのか、そしてそれを納税できる資金があるのかどうかをシミュレートすることが相続人のためにも有用であると思えます。

 

 

いざ、判断能力がなくなってしまえば相続対策は行うことができないと思ってください。すべては早め早めの準備により相続人も笑顔で故人を偲ぶことができるのではないでしょうか。

清算型遺言がのこされていたら

清算型遺言とは遺言の種類の中の一つです。

 

通常遺言と言いますと、「誰になにを残す」というように記載されているケースがほとんどです。例えば「長男には実家の不動産」「二男にはA銀行の預貯金」などと具体的に定められています。

 

清算型遺言も最終的に誰に何を残すのかという遺言の昨日は一緒なのですが、すべての財産を現金化(清算)してそのお金を誰にどれだけ与えるかという遺言です。

 

預貯金等はすべて解約していくことで分配することはできますが、不動産などは誰かが代表して売却することがほとんどです。

 

このような清算型遺言の場合には遺言にて遺言執行者が選任されているケースがほとんどですが、遺言執行者が選任されていない場合、あるいは就任してもらえないケースでは、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申し立てをして任意の遺言執行者を定めてすべての手続きを任せる方が相続人の手間にはなりません。

 

遺言執行者の職務

遺言執行者は相続人の代理人とされ、遺言に記載されたように遺産を分配する権限が与えられます。

不動産がある場合には相続人全員名義に相続登記を行い、また買主の選定、買主との売買契約の締結、買主への所有権移転登記を申請することになります。

 

実際には不動産会社と媒介契約を締結し買主は不動産会社が見つけてくれますので相続人と不動産会社との懸け橋となるようなイメージです。

 

買主が決定すれば、相続人の代理人として不動産の売買契約を締結します。そして、手付金の受け取り、仲介手数料の支払いを行います。

 

残代金の決済時には残代金の受け取り、登記手数料や仲介手数料などの支払い、固定資産税の清算金などを受領します。

 

口座を遺言執行用の口座に

遺言執行をするにあたり専門家がなるケースがほとんどですがそうでない親族の方がなされるケースもあります。

 

遺産の分配に当たり各種金融機関の口座の預貯金を解約し、株などの有価証券も随時相続手続きののちに現金化していくことになります。

 

その際には必ずご自身の財産と遺産の預り金の口座とを分別する必要があります。

 

不動産の売買代金なども預り金口座に入金し、必要な仲介手数料などもこちらの預り金から支払う必要があります。

 

最終遺産の目録を作成し、それらを遺言に記載されたとおりに分配していきます。

                          

今回はあまり耳慣れない清算型遺言についてお話をさせていただきました。

未婚率の上昇や子どもがいない家族の増加につれて兄弟姉妹が相続人になるケースが多々あります。

 

 

最終的に現金化して分けてくださいというシンプルな思いを伝えるのが清算型遺言ですので、気になった方はぜひ近くの専門家にご相談ください。

 

相続税対策でマンションを購入するって本当に得??

相続税の基礎控除が減って相続税を申告、納付する人たちが増えていると言われています。

 

 

よく相続税対策のために不動産を購入することにメリットがあると言われていますが、ではなぜ不動産を購入することが相続税対策になるのかということを理解している方は少ないと思います。

 

今回は不動産の相続税評価の方法をお伝えし、不動産購入のメリットについてお伝えします。

 

相続税評価

現金や預金などの遺産はなくなられた日付の残高などで確認します。

 

しかし、不動産は値があってないようなものです。

実際の取引の価格の決定は最終的には不動産の買主と売主の合意で決まります。いわゆる時価とよばれるものです。

 

そのような曖昧なものではなく、国は基準を決めております。

 

①土地 路線価

    線価がなければ固定資産税評価額をもとにした倍率方式

②建物 固定資産税評価額

 

路線価とは

路線価とは毎年7月1日に国税庁が発表します。土地の前面道路の価格が記載されています。詳細な計算の方式は割愛しますが、この路線価は一般的に売買価格の目安とされる公示価格の80%相当が目安です。

 

固定資産税評価額とは

固定資産税評価額とは不動産の固定資産税の計算をするために毎年自治体が不動産の所有者に対して納税通知書などで通知する金額です。

固定資産税評価額は不動産の時価の70%程度が目安となっています。

 

つまり土地については実際の売買価格の80%程度、建物については実際の売買価格の70%と減額されて評価されることになります。

 

実際に考えてみよう

簡易なシミュレートをしてみます。

 

現金や預貯金で1億円を持っている場合

遺産の評価額=1億円

 

現金1億円で土地を購入した場合

遺産の評価額=8000万円(20%減)

 

現金1億円でマンションを購入した場合

土地と建物の割合については売買契約書によりますが、仮に以下のように設定します。

土地 4000万円

建物 6000万円

 

土地の相続税評価額=4000万円×80%=3200万円

建物の相続税評価額=6000万円×70%=4200万円

遺産の評価額=3200万円+4200万円=7400万円(26%減)

 

という結果となります。

こちらはあくまで単純化したシミュレーションですが、考え方としては上記のような理屈となります。

 

タワーマンションは要注意

しかし、このような不動産の相続税評価と現預金などの相続税評価の方法の違いを悪意に利用して遺産総額をむやみに引き下げようとした事案が多発しました。

タワーマンションは上層階と下層階での売買価格の差が大きい場合が多い一方で固定資産税評価額や路線価については低層階も高層階もかわりはしません。

 

それを利用しタワーマンションを購入することで節税をはかるケースが増えましたので実税価格と相続税評価額が著しく乖離している場合は相続税評価を認めないという判決がでました。

 

 

現金で持つより不動産でもつ方が相続税対策になるのは根本的に今後も変わることはないでしょう。ただし、行き過ぎた節税には国も対応いたします。相続税の対策には信頼できる不動産会社と税理士の活用をおすすめします。

10年後どこに住んでいたいですか??~住まいの終活~

終活の一環として不動産の生前処分をするというお話を最近よく聞くようになりました。

 

 

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衣食住というくらい人間の生活に密着しているのが不動産です。

 

大切に家族と暮らして手を入れてきた自宅。

それはとても思い入れも強いでしょう。

 

10年後の自分を想像してみてください

 

「10年後、あなたはどういう状況でどういうところに住んでいたいですか?」と聞かれると今の家に住み続けるから大丈夫と言える人がどれくらいいるでしょうか。

 

介護をしてもらえる人はいますか?

頼ることができる親族は近くに住んでいますか?

車が運転できなくても買い物ができるスーパーやかかりつけの医院などにすぐにいくことができますか?

10年後も今と同じように階段を上り下りできますか?

 

10年後のご自身を想像した時にどのようなところに住むことが一番自分自身にも周りの人たちにも迷惑が掛からないかを考えてみることもいいでしょう。

 

今の家の階段にてすりをつけたり、お風呂をバリアフリーに変更したり家に手をかけて住み続ける方も。

 

はたまた、今の家が不便だからもう少し過ごしやすい駅の近くに住み替えるという方もいらっしゃいます。

 

さらに、今の自宅では今後はもう住み続けることが難しくなるだろうと判断して早々に売却して施設やサービス付高齢者住宅などに転居される方もいらっしゃいます。

 

 

終の棲家をどう考えるか

 

「じゃあ、どうすればいいのでしょうか?」

という質問に対しては

「どうしたいと思われますか?」

という風に、ご本人様のご希望や夢を丁寧に聞いていくことしかできません。

 

終活とは、第一にご自身の今後の生活について考えて、第二に残された家族のことを考えて迷惑をかけないようにすることが重要です。

 

ですので、人それぞれにそれぞれの終活がありすべてがオーダーメイドでなければならないのです。

 

そして、ご自身がどのように過ごしたいのかという希望を実現するだけ資産があるか自分の財産を棚卸しすることが必要です。

 

預貯金などで今後の老後の生活も安泰だというのであるなら、自宅をわざわざ売却する必要性は低いかと思います。

 

しかし、自宅以外目立った財産がないのであるならば、自宅を担保に入れるという手法や、自宅を売却するということも視野に入れて今後の人生設計をたてるべきです。

 

何よりも健やかに生き続けるということが一番大切なのはいうまでもないことですが、それとともに「親族を含め誰にも迷惑をかけたくない」というお考えをお持ちの方々が最近は特に多いと感じます。

 

不動産の棚卸、つまりいったいいくらくらいで売れるのか?という価値を出すことは専門家でなくてはできません。

 

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自分の人生をふりかえり、これからの人生を謳歌するためにも一度ご自身の財産の棚卸をしてみることをおすすめします。

相続した土地を売却したら宅建業法違反??

地主さんとまではいかなくてもそれなりに広い土地を相続した時におこりうる問題です。

 

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事例

 

コインパーキングにしている土地を相続しました。

 

親がしていたコインパーキング経営などにも興味はなく、相続税の心配もあったので不動産会社に相談に行ったところ、思っていた以上に査定価格もでました。

 

「じゃあ、いっそ売ってしまおうか」

 

不動産会社より「駐車場にしておいたままよりきれいに造成して宅地にしましょう。あの土地でしたら4区画くらいにできますので、それぞれ買主さんをさがしましょう」

 

言われるままに駐車場をつぶして宅地に造成し土地を4区画にわける分筆登記もしてもらいました。ガス、水道もとおすように手配して、あとは4区画それぞれの買主さんがでてくることを心待ちにしていました。

 

ある日、お願いしていた不動産会社の担当者から電話がかかってきました。

(やっと買主がみつかったか)と思って喜んで電話に出たところ、出てきた言葉に絶句しました。

 

「宅建業法違反かもしれない?」

 

上記の話、どこがだめなのでしょうか。

 

自分の土地をどうしようが、誰に売ろうが誰に迷惑をかけるわけでもありません。ましてや詐欺などするつもりはありません。

 

次の買主さんの負担にならないように善意でガスや水道もとおしてあげたり、整地までしてあげたのです。

 

宅建業法の規定

 

宅地建物取引業とは「宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。」と規定されています。(宅建業法第2条第2項)

 

そして、この宅地建物取引業を無免許で行った場合には「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と罰則規定も設けられています。(宅建業法第79条第2項)

 

 

宅地建物取引業とは

 

しかし、宅地建物取引業とはどのような業務なのでしょうか。

 

この点について、宅建業法上ではあきらかにしておらず、国土交通省の定める「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に則って解釈をされます。

 

国土交通省の解釈・運用によると

本号にいう「業として行なう」とは、宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態を指すものであり、その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする」として、さらに5つの判断基準を定めています。

 

今回の事例ではそのうちの一つ、「取引の反復継続性」に該当する可能性が高いといえます。

 

取引の反復継続性とは宅地建物取引業、つまり不動産を売ったり買ったりすることをなんども繰り返し行うということです。

 

今回のように4区画に区割りをしたら4回売買をすることになります。

その点で宅建業法違反になる可能性もあるといえます。

 

ただ、上記の通り、国土交通省の解釈でも「その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする」としていますので、この点だけを抑えて宅建業法違反であるといえるかは判断しかねます。

 

ただ、じゃあ、2区画なら大丈夫なのか?3区画ならどうだ?と言われても明確な基準がないのが事実です。

 

そういう意味では区割りや上下水道の引き込みなどせずに、建売業者などに一括して全部売却してしまった方が宅地建物取引業としてはみられる可能性は低いといえそうです。

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不動産を売却するにしても法令をよく知る不動産業者に依頼しなければあとで大変なことがおこるかもしれませんね。

遺言が無効になるときってどんなとき??

 

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相続人の中で遺産を渡したくない人がいる場合があります。

そのような時に遺言を書くのは有効であるといえます。

 

しかし、せっかく書いて残した遺言であったとしても遺言として効力が発生しない場合があります。

 

そもそも遺言の形式を備えていない場合もありますが、そうではなく遺言の形式は整っていなかったにもかかわらず・・・です。

 

遺言の効力が争われる事例

 

遺言を残すには、上記の通り法律に則った遺言の形式を備える必要があります。

自筆証書遺言ではなく、公正証書で作成された遺言であれば遺言の形式的な要件に関しては安心です。

 

しかし、もう一つ重要な点があります。

 

それが「遺言をする能力があるかどうかという点です。

 

つまり、遺言の内容について正確に理解する判断能力があるかどうかという点が問題になるのです。

 

現在の超高齢化社会において遺言を作成する人たちがどんどんと高齢化していってます。

 

認知症になって判断能力がないとなったらそもそも遺言を作成することができませんので、せっかく作成した遺言も意味をなさなくなります。

 

実際に遺言により財産をもらえなくなった相続人が、財産をもらえる相続人を相手取り、遺言無効確認の訴えを起こすということがあります。

 

遺言無効確認訴訟を提起して、その遺言が無効であることを確認する判決がでると、その遺言に基づく財産分配がなされることを防ぐことができます。

 

結果として、遺言により財産の分配が不利になる人が自身に不利なる財産の分配を防ぐことができるのです。

 

ただ、遺言書を作成した時点で、全く判断能力がなければそもそも遺言を作成することができませんが、判断能力があるときもあれば、ない状態の時もあるというときに作成された遺言はのちのち紛争が起こる可能性が非常に高いといえます。

 

公正証書遺言を作成するにしても公証人は非常にこの遺言能力の点をよくみています。簡単な雑談からはじまり、生年月日や干支を聞いったりしながら判断能力の有無を公証人は確認していきます。

 

ただ、公証人も法律の専門家ではありますが、認知症などの医学の専門家ではありません。

 

ですので、公正証書遺言を作成してもらえたからと言って遺言能力の点においてはそれだけでは完璧であるとはいえないのです。

 

まとめ

 

せっかく遺言を作成したのに後ほど相続人間で争いになったら意味はありません。そもそもなぜ遺言を作成するのか、ご自身の意思を大切にするならば、「遺言をつくろうかな」と思い出した時にはすぐに作成したほうが安心です。

 

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それよりも最も重要なのは禍根を残さないような親族間の人間関係を築き、守っていくことだと思います。

遺言てどうやって作成したらいい?

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日本財団が2017年に20歳~79歳までの男女総勢3097人に遺言に関するアンケートをした結果、 60歳以上の遺言書準備状況は20人に1人となっていました。

対して、遺言に対して無関心な層が 7 割を占めるという結果となっています。

 

さらに、 遺言書を作成しない理由は、「遺言書を書く程の財産がないから」の他、「遺された遺族がうまくやってくれるだろう」と、遺族任せの意識も強いという結果となっています。

 

他方で、 60歳以上の相続経験者の2割がトラブルを経験しており、「兄弟姉妹とのトラブル」がトップとなっています。ただ、 自身に万が一のことがあっても、相続トラブルはないだろうと考える人が8割というように非常に楽観的ではありますが、 親以上に、子世代は兄弟間のトラブル発生を懸念しているとの結果もあります。

 

以上のような結果にもかかわらず実際に遺言の用意をしている人たちは数少ないという非常に矛盾した結果となっています。

 

では実際に遺言をどのように作成していったらいいのでしょうか。

 

まずは資産の棚卸を

遺言を作成する前にご自身の資産の棚卸をしてみましょう。

預貯金、有価証券、投資信託、保険などの金融商品、それと不動産などのプラスの財産だけではなく、債務などのマイナスの財産もです。

 

有価証券などは証券会社から送付される有価証券報告書などをもとに金額を知ることはできますが、不動産については固定資産税の評価額だけではなく、一度不動産会社に依頼して査定をしてもらってもいいでしょう。

 

その中で今後の人生でどれくらいご自身にお金が必要かまずは人生計画を立ててみるのはいかがでしょうか。

 

そして、余剰の財産については残されたご家族のために遺言で分け方を指定してあげるということも考えてみてはいかがでしょう。

 

遺言の方式に則らなければ無効

遺言は人生最後の意思表示だと言われますが、書き方ひとつで遺言が無効になることもあります。

 

まずは、遺言として認められる形式的な要件を必ず備えておかなければなりません。

 

遺言として認められるためには全文を自筆で書く(ただし遺産目録は自筆でなくても可)、日付を正確に年月日まで書く、正確な訂正方法で書く、など正確に遺言の要件に沿ったように書いていかなければなりません。

 

遺言の形式を満たさなければ遺言として認められなくなってしまいますので、反対に遺言を残したことで禍根を残す結果となることもあります。

 

ですので、自筆で書くにしても専門家のアドバイスを受けるか、公正証書で遺言を作成することをお勧めします。

 

自筆証書遺言も法務局で保管してもらえることにより、家庭裁判所での検認手続きを受けなくてもよいということになりましたが、公証人に遺言内容について相談し、意思確認をしてもらったうえで遺言を作成したほうが残されたご家族は安心です。

 

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せっかく遺言を残すのであるならばぜひとも完璧な形式で遺言を作成してください。

 

親と連帯債務でローンを組んでいたら

家を購入する際に配偶者や親の収入を合算してローン審査をうけて、ローンを組むということがあります。

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たとえば、自分一人ではローン審査に通りにくいとか、父親と同居することが前提となっているときなどです。

 

今回は連帯債務としてローンを借りていた場合の手続きについてお話します。

 

 

不動産の持ち分を確認しましょう

親子でローンを組んでいる場合には親、子とも不動産の名義人となっているはずですのでまずは持ち分を確認しましょう。

 

親の名義の持ち分について相続が発生しますので、まずは名義変更の手続きをすすめましょう。

 

その際には借入先の金融機関にも連絡をして相続の手続きについてもお話しておきます。

 

現在の債務の金額や今後の手続きについて相談しておきましょう。

 

相続人が例えば子だけである場合は兄弟間での話し合いが必要です。

 

親子ローンで購入している場合などほかの兄弟も父親の持ち分について相続する権利がありますので、不動産以外にも預貯金などがあり、円満なお話し合いで解決することができればいいですが、ローンの残債務の金額に比べて不動産が高額な場合など、不動産を取得する相続人が他の相続人に対して金銭を支払う(代償分割)などの遺産分割協議となるケースもあります。

 

遺産は不動産や預貯金などのプラスの財産だけではなく、ローンなどのマイナスの財産も遺産となるので、遺産分割協議書にはローンを誰が引き継ぐのかも記載しておくことが必要です。

 

登記手続き

話し合いがまとまれば登記の手続きに進みます。

 

父親の持ち分について分割内容に則って登記名義をうつします。

さらに借り入れについての抵当権等についても変更の登記が必要となります。

 

具体的には①連帯債務者の相続を原因とした抵当権の変更登記、②免責的債務引受による抵当権変更登記となるケースがよくあります。

 

①は上記の通り、債務などのマイナスの財産も相続財産ですので債務についても相続人全員の名義に変更する必要があるからです。

 

②は相続人全員が債務を引き継ぎますが、金融機関の同意を得ることで、共有持ち分をそもそも有していた子一人だけを債務者とする手続きです。

 

不動産を取得する人が債務を引き継ぐの公平ですので、遺産分割協議でローンについても不動産を取得する一人に相続させるという内容の協議書にて金融機関側が了承してくれる場合には①だけで済むケースもあります。

 

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金融機関側とのご相談により登記手続きを司法書士に依頼するようにしてください。

 

離婚と相続問題

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現在は3人に1人が離婚する時代となっています。

 

離婚をすることが昔より一般的になっている現在、今までより離婚後の相続手続きで問題になるケースが増えてくる可能性があります。

 

今回は離婚のご経験がある方の相続手続きについて、今後発生するであろう問題点を家族構成によって検討します。

 

独身で死亡・前妻との間に子どもがいる

 

離婚後は誰とも結婚せずに独身のまま死亡。

前妻との間に子どもがいたが離婚後まったく連絡をとっていないことはよくあります。

 

その場合、前妻との間との子が相続人になりますので、まずは子と連絡をとるようにしなければなりません。

 

死後の相続手続きとして戸籍調査から住所の特定をしていく必要があります。

 

また、結婚はしなくとも内縁関係の人がいて、内縁の方に財産を渡したいというのであるならば、必ず遺言を残しておくようにしましょう。

なぜなら内縁関係には相続権がありませんので、今回のケースではすべて子に相続財産がいき、内縁の妻、あるいは夫は財産がもらえないからです。

 

 

前妻との間に子あり。後妻との間にも子あり。

 

このケースでは、前妻との間の子、および後妻と、後妻との間の子がそれぞれ相続人となります。

 

どのように財産を分けてほしいかはご本人の意思次第ですが、遺言などなくそのまま亡くなられてしまったら、死後、相続人間で争いがおこることが容易に想定できます。

 

遺言がなく亡くなられた場合、預貯金の分配や不動産の名義を変更するにしても必ず前妻との間の子の協力が必要となるからです。

特に、前妻との間の子がまだ未成年のうちに亡くなられてしまった場合には、法定代理人として前妻が遺産分割のテーブルに立つことになり紛争となる可能性が極めて高くなります。

 

若いうちに亡くなることは想定しがたいですが、何が起こるかわからないのが人生ですので、少しでも不安がある方は遺言を作成しておいたほうが安心かと思います。

 

 

離婚後婚姻した後妻に連れ子がいる

 

再婚した後妻も離婚を経験し、前夫との間の子どもを連れて一緒に住んでいるということもあります。

 

この場合、連れ子をいくらかわいがり、実の子どものように扱っていても連れ子は相続人にはなりません。

 

遺産をあたえたいというのであれば、遺言を残す。

あるいは、養子縁組を組むということも必要となります。

 

 

 

今回は離婚率の上昇に伴う今後の相続の問題について考えてみました。

 

相続は家族生活ときってはきれないものです。

自分の現在の状況をきちんと把握してどのような問題が起こりうるか一度検討してみてください。

 

まずは、今自身が亡くなった時に相続人がだれになるのか。

財産はどれくらいになるのか。

それを誰に、どのように使ってもらいたいのか。

 

いろいろと想像してみることが大切です。

相続人がいない場合どうなる??

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現在の日本は、少子高齢化がすすみ、また、離婚率も上昇しています。

「おひとり様」という言葉がメディアでも出てくるようになって久しいですがこの現状は今後発生するであろう相続に大きな問題をかかえることになります。

 

全く相続人がいないということが今以上に増えてくることが容易に想像できるからです。

 

相続人がいない場合どうなるか?

 

亡くなった方の遺産は最終的に国に帰属しますが、現在でも相続人がいない、あるいはいたとしても全員が相続放棄をしたというケースで遺産を受け継ぐ人がいないケースの話を今回はしたいと思います。

 

相続人不存在なら相続財産管理人選任

 

子もなく、親はすでに他界、兄弟もいないということが一人っ子が増えた現在の日本でもよくあることです。

 

その場合、相続財産を管理してもらうためにまずは裁判所に「相続財産管理人の選任」の申し立てをします。

 

亡くなった方の債権者や、亡くなった方の特別縁故者(内縁関係にあったような人で、亡くなった方と同一生計にあった人や療養看護をしていた人)が申し立てをすることが可能です。

 

まず、相続人がいないということを証明するような戸籍を収集し、相続人がいないことを証明しなければなりません。

 

さらに、裁判所で公告などに時間がかかり、手続きが終了するまでに1年間ほどかかります。

 

遺産の行き先

 

亡くなった方の財産で不動産があれば相続財産管理人が売却し、お金に換えます。

そして、現金や預金など遺産の中から病院の入院費や家賃の支払いなどがあれば支払っていきます。

 

それでも遺産がまだ残っていれば、上述した特別縁故者が遺産をもらうことも可能です。

しかし、そのためには相続人不存在が確定した後3か月以内に特別縁故者への財産分与の申し立てをする必要があります。

 

そして特別縁故者からも申し立てがなければ最終的に国に遺産が帰属することになります。

 

 

遺言の準備を

このように内縁関係にある方や療養看護をしてもらった遠縁の方や、近所の方にお礼をのこしたいとしても、特別縁故者としてそもそも認められるか、認められるとしてもそれまでに多額の費用と長い時間、煩雑な手続きが必要となります。

 

ですので、遺産を分け与えたいと思うなら生前に遺言をきちんと残しておく必要があります。そして、その際には遺言執行者をきちんと選任して、かわりに手続きをしてもらえるようにしましょう。

 

 

現在の日本の状況を考えると今後、このように相続人が全くいないという相続が発生していくことが増えてくるでしょう。ご自身がそうである、あるいは周りにそのような人がいる場合にはぜひとも早い段階から遺言の作成などで専門家に相談することをお勧めします。

相続不動産を早く現金化したいときこそ入札を利用しよう

 

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実家の不動産を相続したとして、その処分に困ることがあります。

 

生前両親が住んでいましたが、相続人である子供はそれぞれ家を所有している。実家を受け継ぐものがいない場合では、実家の維持・管理に時間と費用をかけることが難しくなってきます。

 

しかし、不動産は相場がわかりにくく、一般の方はどうしても不動産会社だよりになってしまいます。

 

不動産会社というと「口がうまそう」や「騙されそう」、あるいは「しつこそう」などマイナスなイメージを持たれていることが多く、どうしても警戒してしまいます。

 

今回は不動産会社を上手に利用する方法についてお話します。

 

不動産を売却することを不動産会社にお願いする

 

一般論ですが、不動産会社には大きく分けて二つの種類の不動産会社があります。

 

一つは、不動産仲介会社。もう一つは不動産買取業者です。

 

不動産仲介会社は不動産の売主と買主をマッチングさせることで仲介手数料をもらうことで利益を出す会社です。

 

仲介手数料は「不動産の売買価格の3%+6万円」という金額が上限となっています。

また、売主、買主を一人あるいは一社でマッチングさせたら売主、買主それぞれから上記の金額をもらうことができます。

 

他方、不動産買取業者は不動産を自社で買い取ってリフォームなど付加価値をつけて一般の方に売却をするということで利益を出す会社です。

 

不動産買取業者は、なるべく安く買い取ることで利益を大きく出したいので、不動産買取業者に購入を依頼したら買いたたかれると思ってしまいがちです。

 

ただ、反面、購入までのスピードが一般の個人をさがすよりも早く、あまり価格にこだわりがなく、早く現金化したいときには買取業者を選んだほうがいいのは事実です。

 

しかし、依頼する不動産会社が不動産仲介をメインに行っている会社なのか、不動産の買取をメインに行っている会社なのかわかりにくいのも事実です。

 

入札という方法

 

そこで、不動産会社に連絡をする際に「入札」でお願いしたい旨をお伝えしましょう。

 

入札とは、一般個人の方、あるいは不動産買取会社が提示した購入金額で一番高い金額を提示した人に売却するという方法です。

 

最初に連絡した会社が不動産買取する会社ならまず自分で値段をつけるでしょうし、その金額に納得しないのであれば、不動産仲介に変更し、より高い値段を出しれもらえるほかの買取業者や個人の方を募ってもらえます。

 

反対に最初に連絡したのが不動産仲介会社でしたら、つながりがある不動産買取業者も個人の買主もみつけてもらえます。

 

注意が必要なのはどちらも期限をきちんと設定することと、金額に納得しなかったら売らないことをきちんと承諾させることです。

 

実力のある不動産会社でしたら1週間から2週間で個人、不動産会社を含めて10個ほどの金額をだしてもらえるでしょう。

 

その金額をみて納得すれば売却をすればいいですし、そうでなければ断ればいいのです。

 

しかし、買いたいというオークションです形式ですので、実際のところこの入札が一番不動産の実力、つまり実際の時価がわかるので、長く売り出しを続けていたところで、最初に出された金額より金額が大幅に高くなることは稀であるといえます。

 

今回は相続した不動産の処分の方法として入札という方法を紹介しました。

何よりも、信頼できる不動産会社を見つけることが一番ですが、喜んで入札を受けてくれる会社であれば一度お願いしてみるのもいいでしょう。

 

遺言執行の手続き~不動産~

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遺言の中で遺言執行者が選任されている場合があります。

遺言執行者は特段資格が必要とるわけではありませんが、多くの場合、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家や銀行などの金融機関が選任されています。

 

また遺言執行者は遺言者の死亡後、家庭裁判所に申し立てることにより選任されることもあります。

 

今回は不動産を処分して相続人に分配するよう遺言に書かれていたケース(いわゆる清算型遺言)で遺言執行者が選任されていなかった場合と選任されていた場合と説明します。

 

遺言執行者が選ばれていない場合

 

遺言執行者が選ばれていない場合、相続手続きは法定相続人が協力して法定相続人全員名義に相続登記を行うこととなります。

 

そして、不動産を売却するにあたり法定相続人全員が売主になりますので、法定相続人全員で売買契約書に署名捺印、あるいは特定の相続人に売却手続きを委任することとなります。

 

つまり、①相続登記→②売買に基づく所有権移転登記と二つの手続きが必要となり、そのすべての手続きに相続人全員が参加する必要があります。

 

遺言執行者が選任されている場合

 

遺言執行者が選任されている場合でも登記手続きとしては①相続登記→②売買に基づく所有権移転登記とかわりはありません。

 

しかし、すべての手続きを遺言執行者が代理人として行うことができます

 

つまり、遺言執行の手続きとして不動産の相続手続きも、売却にかかる売買契約の手続きも、さらに売却に伴う買主への所有権移転登記もすべて遺言執行者が相続人の代理人として行うことが可能です。

 

したがって、相続人が面倒な手続きに追われるということがありません。

 

まとめ

 

相続人が子だけで3名程度でしたら遺言執行者を選任していなくても手続きもスムーズにいく可能性が高いとはいえ、兄弟間の仲を考えると不安な点が出てくる人もいるでしょう。

 

また、子もなく、親もいない場合で兄弟姉妹が相続人になる場合など、相続人が多数に及ぶケースは遺言執行者を選任していたほうがいいでしょう。

 

特に高齢化社会である現在では相続人も高齢化しており、認知症の問題、あるいは、相続人がすでに亡くなっていて代襲相続が発生し被相続人からみれば甥姪も含むケースだと相続人が10名以上となることもまれにあります。

 

いずれにしても清算型の遺言を活用する場合には専門家を遺言執行者に選任しておいたほうが手続きはスムーズにいくことが多いといえます。