相続登記を自分で行う場合のメリット・デメリット

前回の記事では相続手続きを自分で行う方法について解説しました。

 

今回は相続登記を自分で行う場合のメリット・デメリットを詳しく解説し、相続手続きの中でも専門家にまかせた方がよい手続きは何か、紹介したいと思います。

 

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相続登記を自分で行う場合のメリット・デメリット

相続手続きを自分でするかどうかを決めるには、自分で行う場合のメリットとデメリットを洗い出して比較することがポイントのひとつです。


ここでは、相続手続きを自分でするメリットとデメリットについて説明します。

 

相続手続きを自分でするメリット

相続手続きを自分でするメリットは「費用負担を軽減できること」です。

 

相続手続きの中でも不動産の名義変更(相続登記)は法律の知識を要する手続きです。


金融機関の預金などの相続手続きはできても、不動産の相続手続きは難しいため挫折するというケースが少なくありません。

 

そのため、不動産の相続手続きについては、司法書士などの専門家に依頼して手続きを代理してもらうのが一般的です。

 

ただ、司法書士に不動産の相続手続きを依頼すると、司法書士に支払う報酬が必要になります。


自分で相続手続きをする場合には、司法書士に支払う報酬がなくなるため、相続手続きにかかる費用負担を軽減できます。

 

弁護士や税理士などに相続手続きを依頼する場合も、相続手続きのボリュームや依頼内容に応じて報酬が発生します。

 

自分で相続手続き全般をこなせば、弁護士や税理士といった専門家に支払う報酬も発生しません。

 

相続手続きを自分でするデメリット

相続手続きを自分でするデメリットはふたつあります。
ひとつは「時間がかかること」、もうひとつは「手続きミスが起きること」です。

 

相続手続きを自分でする場合、被相続人が契約していたサービスの解約といった比較的簡単な手続きなら自分でも問題なくできるかもしれません。

 

しかし、不動産の相続手続きである相続登記などは法律の専門知識を要するので、法的な知識や実務経験がないと、自分で専門書などを読んでゼロから法律や相続手続きの勉強をしながら進めなければいけないでしょう。

 

そうなると、司法書士や弁護士などの専門家に依頼するより手続きに時間がかかってしまいます。

 

相続手続きの中には相続税申告や相続放棄など、期限が決まっている手続きもあります。

 

自分で相続手続きをすると、書類の準備から手続きまですべて自分で行うため、期限に間に合わない可能性もあります。

 

期限に間に合うに準備を進めるのは手間と時間かかります。相続手続きが私生活を圧迫するというひともデメリットのひとつといえます。

 

相続手続きを自分でする場合は、専門知識や実務経験のなさから、手続きミスを引き起こすことも考えられます。

 

専門家であれば難しい相続手続きにも慣れていますが、個人の場合は専門家のような慣れや知識はありません。

 

そのため、手続きミスで何度も窓口に呼ばれたり、そもそも手続き自体ができなかったりするなどの事態が起きうるのです。

 

専門家にまかせたほうがよい相続手続きとは

自分で相続手続きをせず専門家に相続手続きをまかせた方がよいのは「専門的な知識や実務経験を要する相続手続き」です。

 

不動産の相続登記は、登記情報や戸籍を読む知識が必要になる他、法律の深い知識も必要になります。

 

相続税の申告手続きや、相続人同士でトラブルになったときの遺産分割調停などの裁判所手続きなどは、自分で相続手続きを進めるとミスをする可能性があります。

 

専門的な知識を要する手続きなどは専門家にまかせた方が安全ではないでしょうか。

 

この他には、相続人が見つからない場合や遺産がどこにあるかわからないなど、自分での対処が難しいケースでは専門家を頼る方がスムーズかつミスなく相続手続きが進みます。

 

 

 

相続手続きを自分で行えば、費用がかからないというメリットがあります。

 

しかし、手続きの中には期限が決まっているものもあり、間に合わせるためにはプライベートの時間を取られてしまい、つらいと感じることもあるでしょう。

 

自分で相続手続きをするかどうかはデメリットについて慎重に考えて判断することをおすすめします。

 

専門家に相続手続きを依頼すれば、相続手続きが遅れたり相続手続きでミスすることもなく、スムーズに必要な手続きを終わらせてもらえます。

 

相続が発生したら、まずは専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

相続手続きを自分で行う方法

相続手続きは専門家である弁護士や司法書士に依頼する方法と、自分で手続きをする方法があります。

 

相続手続きを自分でするか、それとも専門家にまかせるかどうかは、メリットやデメリットもふまえて決めることが重要です。
自分で相続手続きができそうかどうかも判断ポイントになります。

 

この記事では自分で相続手続きをする方法について解説します。

 

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自分で相続手続きをする方法

相続が発生したらまず何からはじめればよいのでしょうか。

そして、どのように相続手続きを進めればよいのでしょう。

 

自分で相続手続きをするメリットとデメリットを紹介する前に、まずは自分で相続手続きをするときの方法を説明します。

 

自分で遺言書や相続人の調査を行う

相続が発生したらまず遺言書や相続人の調査、遺産の調査をします。

 

被相続人の遺言書があるか自分で探す

被相続人の遺言書がないかを確認します。

遺言書が見つかった場合は、遺言書の種類によっては裁判所の検認手続きを受けなければならないため注意してください。

遺言書が見つかった場合は、基本的に遺言書の内容に沿って相続手続きを行います

 

相続人が誰になるのか戸籍などで調査する

相続人が誰かわからなければ自分で相続手続きができませので、この段階でしっかりと相続人は誰になるのか確認しておくことが重要です。

 

自分で相続人を調査するときは、自治体から戸籍を取得し、被相続人の出生から死まで順に追うという流れで相続人を確認します。

 

相続人が見つかったら、相続手続きに協力してもらえるよう連絡を取っておきましょう。

 

被相続人の遺産を自分で調査する

自分で相続手続きをしようとしても、被相続人の遺産がわからなければ相続手続きのしようがありません。したがって、被相続人の預金や不動産、有価証券など、遺産の在り処などを確認する必要があります。

 

不動産の権利書や預金通帳など、被相続人の遺産につながる情報を見つけて、遺産について確認するという流れです。

 

相続放棄や遺産分割協議などを行う

遺言書の有無や遺産の状況もふまえて相続放棄の検討や遺産分割協議などを行います

 

被相続人に借金が多いときによく使われる相続放棄や、遺産のプラスとマイナスが不明瞭なときなどに使われる限定承認には「相続開始3カ月」という相続手続きの期限が定められているため注意してください。

 

相続人の話し合いで相続財産を分割する場合は、遺産分割協議を相続人全員で行わなければ無効となります。遺産分割協議を終えたら、遺産分割協議書を作成します。

 

自分で相続財産ごとの相続手続きをする

遺産分割協議や遺言の内容に沿って自分で遺産ごとに相続手続きをします。

 

不動産の場合は法務局での相続登記を、預金の場合は金融機関で相続手続きをするという流れです。

 

自分で相続税などの各種相続手続きを行う

自分で相続手続きをする際は、相続税の申告などにも注意が必要になります。

 

相続税はすべての相続ケースで申告が必要になるわけではなく、納税が必要なケースと不要なケースがあります。

 

自分で相続手続きを進める際は、税務署の窓口などに確認しながら申告の要否なども基本的に自分で判断します。

 

相続税の手続きが必要な場合は、遺産の相続手続きとあわせて相続税の手続き準備も行うことになるのです。

 

 

被相続人が利用していたサービスや権利などについても、自分で相続手続きが必要です。

たとえば、スマートフォンなどのサービスや水道や電気などの契約については、相続人などが必要に応じて手続きをすることになります。

【2023年終了】ジュニアnisaの利用時の注意点・相続税対策も使える贈与税の特例を解説

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前回はジュニアnisaは相続税対策に有効なのか、メリットは何なのかということを解説しました。

今回はジュニアnisaの利用時の注意点や相続税対策に使える贈与の特例などをご紹介します。

 

ジュニアnisaを利用するときの注意点

ジュニアnisaには投資の利益が非課税になるなどのメリットもありますが、同時に利用の際に注意したいポイントもあります。

 

注意点に気をつけて使わないと孫や祖父母はジュニアnisaを使ったことを後悔するかもしれません。

 

利用に際しては以下の注意点も理解して、ジュニアnisaの利用がデメリットにならないかよく考えて活用することが重要です。

ジュニアnisa利用の際の注意点は4つあります。

ジュニアnisaは基礎控除の範囲内の贈与である

贈与税には年110万円という基礎控除の枠があります。
基礎控除の範囲内であれば贈与税の課税は原則的にありません。

 

ジュニアnisaの枠は年80万円です。
ジュニアnisaの枠が年80万円あるわけだから、基礎控除と合計して年190万円(贈与税基礎控除とジュニアnisaの枠の合計額)があると思うかもしれません。

 

違います。
ジュニアnisaを使っても贈与の非課税枠が190万円になるわけではないのです。

 

ジュニアnisaはあくまで贈与税の基礎控除110万円の範囲内で行いますので、ジュニアnisaを使えば贈与税の基礎控除枠はジュニアnisaの分だけ減ってしまいます。

 

あくまでジュニアnisaは投資運用の利益が非課税になるという制度です。

 

孫が特に株式や投資信託の運用をしないのであれば、別にジュニアnisaである必要はありません。

 

ジュニアnisaはあくまで贈与税の基礎控除枠を使った贈与である点に注意が必要になります。

 

ジュニアnisa口座は原則的に変更できない

ジュニアnisa口座には金融機関の変更は基本的にできず、口座数にも制限があります。

 

まずジュニアnisaは1人1口座という制限があるのです。
ひとつの金融機関にジュニアnisaの口座を作って「別の金融機関がよかった」となった場合でも、原則的に金融機関や口座を自由に変更できません。

 

ジュニアnisa口座の変更自体は絶対に不可能というわけではないのですが、変更の場合は作成したジュニアnisa口座を閉鎖して別の金融機関に作り直さなければいけません。

 

ジュニアnisa口座を閉鎖すると遡って税金の課税があるため注意してください。

 

すでに運用している投資信託などはジュニアnisaの口座に移管できません。
合わせて注意が必要です。

 

ジュニアnisaでは損失が発生するリスクがある

祖父母が孫に相続税対策として年80万円ずつの贈与を行ったとします。

ジュニアnisa口座を使って投資信託や株式などで投資運用した場合は損失が発生する可能性があるため注意が必要です。

 

株式や投資信託などは値動きします。
投資運用しても必ず元手が増えるわけではなく、反対に減って損をする可能性もあります。

 

ジュニアnisaを使って祖父母が孫に贈与しても、投資運用の状況によってはせっかくの贈与財産が減ってしまい、孫や祖父母にとって残念な結果になる可能性があるのです。

 

ジュニアnisaを使って孫に贈与する場合は、株式や投資信託の価格変動リスクについても理解したうえで行う必要があります。

 

ジュニアnisaは2023年に新規口座開設が終了する

ジュニアnisaは2023年に新規口座開設の終了が決まっています。

 

相続対策として使う場合は新規口座開設終了や今後のジュニアnisa関係のニュースや情報に注意したうえで使う必要があります。

 

ジュニアnisaは20歳になれば一般のnisa口座に移すことも可能です。

 

ジュニアnisa制度終了までに20歳にならない場合でも、そのまま20歳まで非課税のまま所持できます。

 

ジュニアnisa口座新規開設終了にともない手続きが発生する可能性もあります。

 

これからジュニアnisaを相続税対策で利用しようと考えている場合は合わせて注意してください。

 

相続税対策にも使える贈与税の特例

孫子に財産を渡したい場合や相続対策したいケースでは、贈与税の特例と比較してジュニアnisaを使うことが重要です。

 

子供の年齢によってはジュニアnisaが使えない場合や、そもそもジュニアnisaでは贈与額が足りないケースもあります。

 

贈与したい額や相続税対策に望むことや贈与の目的などに合わせて以下のような特例も検討してみてはいかがでしょう。

 

教育資金一括贈与による相続税対策

祖父母や父母などが孫子に教育資金を一括贈与する場合、特例の条件に当てはまっていれば非課税になります。
非課税の枠は最大で1,500万円です。

 

結婚・子育て資金の一括贈与による相続税対策

孫子が20歳以上の場合は結婚や子育てに充てる資金を一括贈与した場合の非課税の特例があります。

 

孫子の結婚や子育てのための費用を一括で贈与した場合は、最大で1,000万円まで贈与税が非課税になるのです。

 

住宅取得資金の贈与による相続税対策

父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得を目的とした資金の贈与を受ける場合に使える贈与税の特例です。
住宅取得資金の贈与の特例条件に当てはまっている場合は最大3,000万円までの贈与税が非課税になる特例になります。

 

贈与税の非課税枠を使った相続税対策

ジュニアnisaの相続税対策の仕組みそのものは、生前贈与により相続財産を減らすことによって相続税を減らす、あるいは相続税の基礎控除内に収まるようにすることです。

 

生前贈与により相続財産を減らしたいのであれば特にジュニアnisaにこだわる必要はありません

 

贈与税の非課税枠である年110万円の範囲内で贈与を行うという方法もあります。

 

まとめ

ジュニアnisaは口座内で投資運用した利益が非課税になる制度です。

 

枠は年80万円ですが、この枠は贈与税の非課税枠と別にもらえるわけではなく、贈与税の非課税枠内に含まれます。

 

祖父母が「孫に財産を渡したい」「相続税対策したい」という場合で孫が投資したいなどの事情が特になければ、あえてジュニアnisaでなくてもよいという結論になります。

 

贈与税には相続税対策に使える特例がいくつもあるのです。
専門家に相談のうえで贈与税の特例なども比較検討し、ニーズに合った相続税対策をしてはいかがでしょう。

【2023年終了】ジュニアnisaは相続税対策に有効?メリットは?

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可愛い孫に財産を渡したくても、相続によって相続税が課税されると孫が手にする財産は課税分だけ少なくなります。

 

孫に財産を渡したい祖父母は「何か相続税対策になる方法がないだろうか」と思うのではないでしょうか。

 

そして、よく相続税対策になるという話を耳にするジュニアnisaはどうなのだろうかと思うのではないでしょうか。

 

ジュニアnisaは本当に相続対策になるのでしょうか。
ジュニアnisaにはどのようなメリットがあり、使う際にどのようなことに注意すればいいのでしょう。

 

ジュニアnisaついて2回に分けて説明していきます。
今回はジュニアnisaが相続税対策になるかどうかなど基本的な疑問にお答えするとともに、メリットは何なのか?ということを紹介します。

 

ジュニアnisaは相続税対策になるが注意が必要

ジュニアnisaとは未成年が「投資の利益が非課税になる投資用口座を開設する方法」です。

 

株式などに投資をすると利益に対して約20%の課税が行われます。
ジュニアnisaで開設した口座で投資することにより利益に対する税金が非課税になるという仕組みです。

 

ジュニアnisaの口座を開設するのは基本的に未成年(口座開設する年の1月1日時点で0~19歳の子供)ですが、2親等内の親族がジュニアnisa口座の代理運用者になることが可能です。

2親等内の親族とは親や祖父母などのことです。

 

ジュニアnisaにお金を出すことで祖父母は孫に財産を贈与できます。
ジュニアnisaでの投資運用の資金を祖父母が孫に贈与することで相続税対策としても使えるのです。

相続対策になる仕組みは「ジュニアnisaのメリット」の見出しで詳しく説明します。

 

また、祖父母と孫がジュニアnisaを使って相続税対策することには他にもメリットがあります。

 

しかし、同時にジュニアnisaは贈与税の非課税枠である110万円に含まれているだけなど利用に際しての注意点もあるのです。

 

ジュニアnisa利用の際は注意点に留意する必要があります。
ジュニアnisaのメリットと利用の際の注意点について順番に説明します。

 

ジュニアnisaのメリット

まずはジュニアnisaのメリットについて説明します。
ジュニアnisaの利用には孫と祖父母に4つのメリットがあります。

 

ジュニアnisaは相続税対策に使える

ジュニアnisaの第一のメリットが「相続税対策に使える」という点です。
たとえば祖父母の財産が相続税の非課税枠より多かったとします。

 

相続税の非課税枠を出てしまうと基本的に相続税の課税対象です。
生前贈与など何らかのかたちで相続税対策をしなければ、相続人などに渡せる財産がその分だけ少なくなってしまいます。

 

このようなときにジュニアnisaによる相続対策が考えられるのです。

 

ジュニアnisaは年間80万円まで非課税の枠があります。
祖父母が孫にジュニアnisaの非課税枠である80万円を毎年渡すことで相続財産を減らせます。

 

相続財産が減ればその分だけ相続税の課税対象が減るわけです。
結果、相続対策になるという仕組みです。
このようにジュニアnisaによって相続税対策ができるというメリットがあります。

 

ジュニアnisaは運用益が非課税になる

ジュニアnisaは投資運用の利益が非課税になる口座です。

祖父母が孫に贈与した年間80万円までの資金で孫が株式などに投資したり、投資信託を運用したりすることで得られる利益が非課税になります。

 

ジュニアnisa以外の口座で孫が投資運用するよりも税金面で孫自身にもメリットがあるのです。

 

ジュニアnisaは投資運用なので資産が増える可能性あり

ジュニアnisaは株式や投資信託の運用に使う口座です。

 

祖父母が年80万円贈与する資金を孫が株式投資や投資信託運用などに使うことで元手を増やせる可能性があります。
孫が投資や金融の知識に触れるきっかけにもなるはずです。

 

ジュニアnisaの活用により孫への積立ができる

ジュニアnisa口座に入っているお金には引き出しの制限があります。

 

制限があることによってジュニアnisa口座の資金は「プールできるが引き出せない」という性質のお金になるのです。

 

引き出しが容易ではないため、ジュニアnisaを通じて孫の将来のための資金積立ができるというメリットがあります。

再婚している人の相続は要注意!

今回は再婚している場合や、再婚している親がいる場合の注意点を説明していきます。

 

前婚時にお子さんがいた時の注意点

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このブログでも何度も書いていますが、遺言書がない場合は、相続が発生した際、相続人全員での遺産分割協議になります。

 

では再婚をしている時の注意点はなんでしょうか?

 

再婚と言っても様々パターンがあるので、パターン別に開設していきます。

 

・前妻との間に子供がいて、離婚して、親権は前妻が持っている場合

 

男性が再婚して、現在の妻との間に子供ができた場合、相続関係はどうなるでしょうか?

 

男性の相続人:現在の妻、現在の妻との子供、前妻との間の子

 

上記の様になります。

 

この場合どこが大変か分かりますでしょうか?

 

何度もお伝えしていますが、遺産分割協議は相続人全員で協議をしないと成立しません。

 

このパターンですと、現在の妻と、現在の妻との子、そして前妻の妻との間の子供で遺産分割協議をしないといけません。

 

仮に前妻との子との間でも交流があれば良いですが、子供が小さい頃などに、離婚していて、もう何十年も会っていない可能性なども充分に考えられます。

 

そんな関係でも遺産分割協議をしないと、相続手続きが進まなくなってしまいます。

 

相続手続きが進まないということは、住んでいる持ち家の名義変更や、被相続人名義の預貯金なども解約もできないということです。

 

しかも前妻の子であっても、相続人という立場は現在の家族とも立場は同じですので、原則相続分は同じです。

 

前妻の子が相続分はいらないけど、手続きには協力しますと言わない限りは、現在の妻との間の子と同じ相続分を渡すことになります。

 

相続分がいくらというより、この場合は話し合いをすることも難しいことになります。

 

感情的に考えても、何十年も疎遠だった子供に、亡くなった方の財産の何割かを渡す事になるので、スムーズにいかない可能性が十分に考えられます。

 

次のパターンはこのような関係の場合です。

 

・結婚相手にすでに子供がいて、その子供と養子縁組などをしていない場合

 

この場合、結婚相手の子と養子縁組をしていれば、実の子と同じ扱いになりますので問題はありません。

 

でも何か知らの事情で養子縁組をしていないと、結婚相手の子供は相続人ではありません。

 

あくまで親族というだけです。

 

遺言がないと、相続分はありません。

 

仮に結婚後、二人の間に子供が生まれていて、兄弟として生活していたとしても、いざ相続が発生した時には、妻の連れていた子供には相続分がありませんので、遺産分割協議する資格はありません。

 

養親縁組するのを意図的にしてないだけでなく、知らなかっただけでも相続分はありません。

 

上記2つのパターンが典型的ですが、民法では実際の生活実績などで判断せずに、あくまで戸籍上の関係で相続は処理されますので、このような問題が発生することになります。

 

ではどうすればこのようなトラブルを避けれるでしょうか?

 

それはこのブログでも何度も記載していますが、遺言書を作成するのが一番の解決方法になります。

 

遺言でしっかり誰に財産を渡すのかを決めておくことが大事になります。

 

このような場合の遺言を作る際は遺言の文言や遺留分に十分に注意が必要です。

 

2つ目の例の様に奥さんのお子さんに財産を渡す場合で、養子縁組していないなら、○○に財産を相続させるではなく、遺贈するという文言を使わないといけません。

 

相続人ではないので、相続ではなく、遺言で贈与するという意味で、遺贈という用語を使います。

 

また1つ目の例では、仮に前妻との間の子に相続させない内容の遺言を作ったとしても、前妻との間の子には遺留分相当の財産を受け取る権利があります。

 

これは遺言を作ったとしても、遺留分を前妻との子が請求してきたら、渡さないといけません。

 

このルールを理解した上で、遺言書の内容を決める必要あります。

 

他にも色々注意点はありますが、何より再婚している場合は、相続時には様々なトラブルが起こる可能性がありますので、しっかりとした相続対策が必要です。

 

知らなかったから大丈夫ということはありませんので、正しい知識を身につけて、しっかりとした対策をしておきましょう。

遺言内容の変更の仕方

今回は遺言を変更する時のやり方について説明します。

 

遺言内容の変更の仕方

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一度遺言作成したけど、財産内容が変わったり、家族との関係性などが変わったため、訂正、変更、書き直しをしたい時のやり方をお伝えします。

 

遺言を訂正変更するには、法定のやり方に沿ってやらないと、その訂正変更自体が無効になってしまいます。

 

遺言が有効になる時というのは、遺言者は死亡した時です。言葉は良くないかもしれませんが、「死人にくちなし」の状態になってしまいます。

 

そのため遺言を作る時、訂正、変更、書き直し等する時は、法律基づいて直さないと、遺言自体が有効になりません。

 

すでに自筆で遺言を作られてる方も、修正テープを使ったりしないようにして下さい。

 

今回の記事ですべての内容を網羅することは出来ないので、今回は依然の遺言を撤回して、再度作り直す方法をお伝えしたいと思います。

 

・相続させる予定だった人が先に亡くなってしまった。


・新たに不動産など財産価値のあるものを取得した。

・遺言作成後の相続人との関係性などが変わったので、改めて遺言を作り直したい時。

 

上記の様な場合は、訂正や変更でなく、新しい遺言書を作成してしまった方がトラブルも少なく、スムーズにいくと思われます。

 

実は遺言書は何回作ろうが、問題ありません。

 

1回目の遺言と、2回目の遺言どちらも有効です。

 

1回目の遺言と2回目の遺言で内容が抵触する範囲で、2回目の遺言有効になります。

 

具体的には

1回目の遺言 A不動産をBへ C預貯金をDへ

2回目の遺言 A不動産をEへ 

 

上記の様になっていた場合、A不動産はEへ、C預貯金はDへ、というのが遺言者の意思とみなされます。

 

1回目と2回目の遺言で抵触しているA不動産の行き先だけが変更になり、何も触れられていないC預貯金は1回目の遺言がそのまま有効となります。

 

原則この様なルールになっているので、遺言書は何度作っても問題ないのですが、これでは残された家族も困りますし、手続きにも色々面倒なことが出てくると思われます。

 

その為、先ほど書いた様に新しい遺言書を新たに書き直すことが一番トラブルが少なくなります。

 

では遺言を書き直すにはどのようにすれば良いのか?

 

それは2回目の遺言の冒頭に下記のような一文を入れることです。

 

「遺言者は平成○○年○月○○日作成の遺言書を全部撤回し、改めて次の通り遺言をする」

 

このような文を入れて、改めて遺言書を作ることで、1回目の遺言の効力はなくなり、2回目の遺言が有効になります。

 

また一つだけでなく、複数作ってしまいる場合は、例文の様に日付で特定するのも良いですが、「本日より前の日付で作成した遺言書をすべて撤回し、○○~」と記載します。

 

この様な一文を入れることで、最新の遺言ほ書だけが有効になり、複数ある遺言書の解釈でトラブルが回避できます。

 

もちろん名前などの誤記などの訂正をする場合には、書き直しまでしなくても、民法に記載されている訂正の仕方で訂正すれば良いと思います。

 

しかし以前に作成した遺言と大幅に内容が変わった際は、説明したような形で再度遺言書を作るのが一番良いと思います。

 

遺言訂正時の外の注意点

 

他に知っておいて欲しい点は、自筆証書で作成した遺言を公正証書遺言で訂正することも可能ですし、逆も同じです。

 

遺言の形式面でなく、日付で判断されますので、どんな形式で遺言を作成していても問題ありません。

 

この様に遺言は何度でも書き直すことが可能です。

 

一度遺言を作ってしまうと、もう書き直せないので、まだ作れないと思っている方もいらっしゃいますが、何度でも作り直せますので、作る時にベストだと思われる気持ちで作成すれば、問題ないことが分かって頂けると思います。

 

また遺言書に書いた財産は使えなくなってしまうと考える方もいますが、遺言を書いた後に生前に処分しても何も問題ありません。

 

その部分の遺言を撤回したとみなされますので、特に遺言を書き直す必要もありません。

 

遺言は書きたい、書こうと思った瞬間がベストの作成タイミングですので、先のことはあまり考えすぎずに遺言書を作成して下さい。

 

遺言書があるのとないのでは、雲泥の違いになるのが相続ですので、是非遺言書作成にチャレンジして下さい。

相続放棄と遺留分放棄の違い

今回は相続放棄と遺留分放棄の違いについて説明します。

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相続放棄とは?

相続放棄という言葉は聞いたことがあるかもしれません。

 

一般的には相続放棄は何も相続しないことだと思われているかなと思います。

 

その通りではあるのですが、厳密には違います。

 

まず相続放棄は家庭裁判所での申述が必要になります。この意味で相続放棄という言葉を使っている方は少ないかなと思います。

 

亡くなった方と疎遠だったりするため、特に何もいらないという時に、相続放棄という言葉を使っていると思いますが、この場合は相続人ではあるけど、遺産分割協議において、何も相続しないという意味になります。

 

家庭裁判所で相続放棄の申述をすると、相続人としての地位がなくなります。

結果、相続人全員での遺産分割協議に参加する地位もなくなります。

 

また相続放棄には期限があります。

これは自分が相続人であることを知り、また相続する財産(負債も含む)があることを知ってから、3ヶ月です。

 

3ヶ月はとても短い期間です。上記の事実を知っていて、そのまま3ヶ月を経過すれば、特別な場合を除き、相続放棄をすることはできません。

 

仮に疎遠の関係にある相続だとしても、その人が事業などで借金などを背負っている時は、何もしらずにいると、相続放棄したくてもできなくて、借金を背負わさられる可能性もありますので、注意が必要です。

 

また相続放棄は被相続人の生前はすることができません。

 

例えば親子の縁を切っていて、親の財産は一切受け取りたくないと思っても、親が生存している間は相続放棄の手続はできません。

 

これは生前にお前は相続するな!などの被相続人または周りの相続人からの圧力がかからない様に、生前は手続きできなくなっています。

 

もし被相続人の側で相続させたくない人がいるのなら、遺言書を作ってしっかりと意思表示をしておくという事で解決できるからです。

 

では次にあまり聞きなれない遺留分放棄について、説明したいと思います。

遺留分の放棄とは?

遺留分とは相続人に保障された一定の権利のことをいいます。

 

例えば、養うべき相続人がいるのに、遺言で愛人に全財産を遺言で贈与してしまった時に、残された相続人がその愛人に一定の財産を請求できる権利のことです。

 

本来であれば、家族が相続するべきだった財産が愛人の手に渡ってしまったため、家族の生活のために、一定の額を愛人から取り戻すことができることになります。

 

この遺留分については相続放棄と違い、生前にも遺留分の放棄が可能です。

 

遺留分の放棄も家庭裁判所に申し立てるのですが、相続放棄とは違い、家庭裁判所の許可が必要になります。

 

相続放棄の場合は「申述」すれば放棄が可能です。申述とは申し述べることです。必要書類を提出して、申し述べれば相続放棄できることになっています。

 

これに対して遺留分の放棄は家庭裁判所の「許可」が必要になります。

許可が必要ということは、場合によっては許可されないこともあるということです。

 

遺留分は被相続人の家族が路頭に迷わないように、相続人に認められた一定の権利です。

 

これを放棄してしまった上で、相続人が生活に困窮してしまうと、生活保護等を使って、国や県、市が相続人の生活のために、税金を投入しないといけなくなる為、放棄の要件が厳しくなっています。

 

遺留分はあくまで被相続人が遺言をのこしていて、相続人に一定の額の財産がいかなくなってしまった時の制度です。

 

普段の生活では、余り聞き馴染みのない制度になりますが、実はこの遺留分の制度があることによって、遺言書を作る際には注意が必要になります。

 

自分の財産なんだから、死んだ後にどのように処分したって自由じゃないかと思い、遺留分を考慮しない遺言書を作成してしまうと、遺言書を作成しなかった時より、相続トラブルが発生してしまう事態も考えられます。

 

その為、遺言書を作成する際には十分な注意が必要ですし、残された相続人の人は遺言書があるからあきらめていた場合でも相続財産を取得する可能性も出てきます。

 

この様に、相続には一般の方にはあまり馴染みのない制度が沢山あります。

 

残された家族が困らない様にするためには、しっかりとした知識を身につけておくことが大事かなと思います。

相続手続きにおける行方不明者の取り扱い

今回は相続人に行方不明者がいる時の相続手続きについて説明したいと思います。

 

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行方不明なんてめったにない様なことに思えますが、令和元年の警察庁発表のデータで年間で86933人です。

 

これは届出が受理された人数ですので、実際にはもっと沢山の数字が予想されます。

 

事件絡みの行方不明ではなくても、家族関係のもつれや、借金等で行方が分からなくなる人も多数考えられます。

 

 では推定相続人が行方不明の場合はどのように相続手続きすれば良いのでしょうか?

 

行方不明者がいる時の相続手続き

 

過去の記事でも何度も記載していますが、遺言がない場合は相続人全員による遺産分割協議が必要になります。

 

でも相続人が行方不明では、遺産分割協議ができません。

 

行方不明にも様々なパターンが考えられますが、一つ目は住所が不明の場合です。

 

これが戸籍の附票を取得することで、判明することがあります。

 

戸籍の附票は本籍地の戸籍と共に管理されているもので、その戸籍に加入してからの住所の移動がすべて記載されているものです。取得するには本籍地のある役所に請求することになります。

 

住民票との違いは住民票はどこの場所に住んでるか分からないと請求先すら分かりませんが、戸籍は本籍地が移動してなければ、他親族等の本籍から分かることが多いので、請求ができないことがほとんどありえません。

 

本籍地を変更せずに、住所を移転した場合、戸籍の附票を取得すれば、行方不明者の住所が分かる可能性があります。

 

しかし行方不明の人が住民票を移動してるとは限りませんし、その住所地に住んでいるとは限りません。

住民票移動しないで居住場所を変えている人は沢山います。

 

その場合次の手はどうなるでしょうか?

 

不在者財産管理人の申立ての制度があります。

 

家庭裁判所に不在者(行方不明者)の代わりに、遺産分割協議してくれる代理人の選任を申し立てることです。

 

無事に選任された不在者財産管理人が選任されると行方不明者に代わって、不在者財産管理人が遺産分割協議をすることになります。

 

その結果相続手続きを進める事ができることになります。

 

不在者財産管理人制度を使う際の注意点

 

ただ注意点としては、この不在者財産管理人の代理権の範囲は制限されていますので、相続人間で特定の相続人に相続財産を相続させたくても、出来ない可能性があります。

 

法定相続分通りに不在者に相続させる遺産分割協議をしないと、裁判所からOKがでないことが多いかもしれません。もちろん色々裁判所と話す事はできますが、他の相続人の意図通りに協議することは簡単にはいきません。

 

不在者の従来の住所または居所(生活してたと思われる場所)を管轄する家庭裁判所に利害関係人が申し立てることで、不在者財産管理人の選任の審判が始まります。

 

上記の不在者財産管理人の選任の申立てで、相続手続きは完了すると思いますが、ここまで手続きするのも大変ですよね。

 

戸籍の附票を取得と簡単に行っても、本籍地が遠方にあれば、郵送で取得することになりますが、郵送の場合は定額小為替をいう現金代わりの証書を使うことになります。

 

・定額小為替はどこで買えるのか?


・本籍地はどうやって調べるのか?

・戸籍の附票は誰が請求できるのか?

 

など知識がないと一から調べないといけません。

 

まして、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをするなんて、もっとハードルが上がると思います。

 

裁判所のHPから必要書類を抜粋すると、下記の様になります。

・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)

・不在者の戸籍附票

・財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票

・不在の事実を証する資料

・不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)

・利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),賃貸借契約書写し,金銭消費貸借契約書写し等)

 

かなり難しいことが分かって頂けると思います。

 

今は大丈夫でも相続が発生した時に、家族がどのような状態にあるかは、誰も分かりません。

 

相続手続きで大変な思いや苦労をしない為には、遺言書の作成が一番の対策になることはご理解いただけるかなと思います。

寄与分と特別受益とは?

今回は寄与分と特別受益の説明です。

あまり聞きなれない言葉だと思います。

どちらも相続人間の実質的な公平を図るための制度です。

主に法定相続分を修正するために使われます。

 

法定相続分とは民法で定められた国のルールです。

亡くなられた方の意思が優先するのですが、遺言等がないと、亡くなられた方が生前どんな考え方でいたのかは分かりません。

遺言がない場合には、法定相続分を元に遺産分割をすることになりますが、その法定相続分を修正して、相続人間の不公平を修正するのが、寄与分と特別受益です。

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寄与分とは?

共同相続人中に、被相続人の財産の維持、増加について特別の寄与をしたものがいる場合に、その相続人を優遇するための仕組みが寄与分の制度になります。

実家の父の仕事を無償で手伝っていた長男と、実家を離れて都会でサラリーマンをしていた二男とで、長男を相続分において優遇しようとするのが寄与分です。

原則、長男と二男は法定相続分においては平等です。

ただ上記の様に父の相続の際に、父を手伝った長男と全く手伝いをしていない二男が同じ相続分では、長男が少しかわいそうですよね?

そこでその長男の父への貢献分を相続分に含めて、相続分を計算することになります。

 

その寄与分とはどういう場合に発生するのか?

1.亡くなった人の事業に関する労務の提供または財産上の給付

2.亡くなった人の療養看護その他の方法

上記の様な事例があった先に、寄与分を定める事になります。

 

注意点としては、同じく相続人である妻の寄与分についてです。

妻の日常の家事は、通常の寄与として、特別の寄与分となりません。妻が配偶者の面倒を見るのは当然と考えらえれていて、元々他の相続人より相続分は多く設定されているからです。

他には内縁の妻です。籍を入れていないパートナーなどです。

このパートナーがどんなに貢献してたとしても、寄与分は認められません。

寄与分は相続人だけに認められている制度だからです。

この様に一定の相続人に法定相続分より多く、相続分を取らせるのが寄与分の制度になります。

特別受益とは?

寄与分の逆バージョンが特別受益になります。

特別受益も法定相続分を修正する制度です。

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、または婚姻、養子縁組もしくは生計の資本として贈与を受けた者がある時、その者を特別受益者として、法定相続分を少なくします。

 

例えば、結婚する時に300万お祝い金を親からもらった子供、また結婚して家を買うにあたり親から頭金として1000万贈与してもらったなどの場合です。

この場合、贈与等を受けた相続人と、全く何ももらっていない相続人で相続分は同じだと不平等になりますので、この不平等を是正することになります。

 

注意点としては贈与を受けたものに価額の増減があった場合に、どの金額で贈与額を算定するかです。現金なら問題はないですが、宝石であったりした場合です。贈与時と相続時の価格差がある場合です。

この場合、価額が減少した責任が贈与を受けた者にある場合、贈与時の価額で算定するのが原則となります。要は壊れていないものとしても価格で計算することになります。

新しい制度、特別寄与料とは?

被相続人に子供がいたとします。この子供が海外勤務中で長年海外にいて、被相続人である父の看病は全くできませんでした。

この父の看病は、父の妹が長年療養看護をしていたとします。

こんな状況の時に、父の妹に父の財産を一部貰っても問題はないように思われます。

相続のルールからいうと、父の妹は相続人ではありませんので、今までなら遺言で贈与してもらえない限り、相続分はありませんでしたが、今回民法改正で新しく制度ができました。

 

それが特別寄与料です。

ただ全くの他人には認められません。親族でなければ認められません。また看護の見返りに金銭を貰っていた時は請求できません。

 

この様に相続のルールとして基本がありますが、様々な事情によって、相続人間の相続分を修正する制度が作られています。

 

なかなか一般の方には難しく、知らないとそもそもどうにもなりませんが、知識を得ておくのはとても大事な事になりますし、いくら制度があるといえでも、やはりしっかり遺言書を作って意思を明確にしておくのがとても大事なことではないかなと思います。

 

 

 

 

遺言の書き方~予備的遺言の必要性と活用方法~

今回は予備的遺言について説明してきたいと思います。

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予備的遺言とは何か?

遺言を作っておきましょう。相続トラブルを回避するために!など、遺言の重要性が年々高まったきています。

遺言を作成するには様々なルールがあります。

遺言を作成する上での形式面のルールであったり、遺言に使う文言のルールなどがあります。

その中でも比較的重要なのが、予備的遺言のルールになります。

 

例えば、「妻にすべての財産を相続させる」という遺言を作成しました。

妻に相続させて、妻の生活を安定させたい。

子供達は成人して結婚もしてるし、財産はいらないだろう。

兄弟間では仲があまり良くないから、しっかり遺言を作って、みんなで話し合う必要性をなくして、円満な相続にしたい。と思い上記の様な遺言を作成したとします。

何にも問題はない様にみえますし、遺言を作るなんてとても立派なことです。

 

でも実はこの遺言には一つ落とし穴があります。

それは妻より先に遺言者が亡くなるとは限らないことです。

いくら年齢が遺言者の方が上でも、どちらが先になくなるかは分かりません。

こればかりは誰にも分かりません。

 

もし妻が先に亡くなってしまったらこの遺言はどうなるでしょうか?

遺言の効力は発生しません。

どういうことかというと、遺言の効力は遺言者が死亡した時に、発生します。

そのため、遺言者よりも先に相続財産をもらう予定だった人、今回の例では妻が先になくなってしまうと、その部分の遺言の効力は発生しないのです。

結果、相続財産は子供達が相続することになり、財産をどのように分けるか遺産分割をしないといけなくなるのです。

 

元々妻の老後のことを考え、子供たちの仲があまり良くない為、遺産分割協議をしないようにする為に、遺言書を作成したのですが、遺言の効力が発生しないため、結局仲の悪い兄弟間で遺産分割をしなくてはいけなくなってしまいました。

本当にもったいない話ですし、遺言を作成した意味がありません。

ではどのようにすればこのような事態を回避できたのでしょうか?

それが予備的遺言の活用になります。

予備的遺言とは読んで字の如く、予備的に作成する遺言になります。

予備的に作成と言っても、遺言を2通作るわけではなく、同じ遺言内で作る事になります。

 

例えば先ほどの遺言の例の場合だと、

「妻にすべての財産を相続させる。妻が遺言者より以前に死亡した時は、○○の財産は長男へ、○○の財産は長女へ相続させる。」

の様に、もしもの事態に備えて相続先を指定しておくことを予備的遺言といいます。

 

この様に遺言書を作成しておけば、不測の事態が起きた時にも、相続トラブルを回避できる可能性が高くなります。

まずは一番望む相続の形で遺言書を作成し、仮に亡くなる順番が前後してしまった時に、望む相続の形を遺言書に記載しておくことが重要になってきます。

むしろ予備的遺言が入っていない遺言は、リスクの高い遺言になります。

 

特に夫婦間で財産を相続させる遺言を作る場合などは、年齢も近いことが大半ですので、どちらが先に亡くなってもトラブルが発生しない形で遺言書を作成するのが望ましい遺言の形になります。

夫婦共に遺言書を作成して、どちらが先に亡くなっても良い様に、お互いが遺言書を作るのがベストな方法だと思います。

 

他にも遺言で財産をある団体に寄付するなどした場合も、その団体が遺言の効力発生時に消滅していたりする可能性もあります。

寄付する理由は様々だと思いますが、仮に寄付の理由が家族に財産を残さない方がトラブルにならないと考えての結果だとすると、せっかく遺言作ったのに、意味のないものとなってしまう可能性があります。

 

もちろん予備的遺言を作ったとしても、予想できないことが起きている可能性は0ではありません。

そうだとしても、年齢の近い人との間での相続、または法人などに贈与する時などは、出来る限り予備的な遺言を考えて、作成するのが無難な選択肢になってくると思います。

 

 

 

 

エンディングノートの活用の仕方

今回はエンディングノートの活用の仕方を説明していきたいと思います。

世間的にはかなり認知度か高まってきたエンディングノート。

上手く活用できれば、立派な終活、相続対策、認知症対策になりますが、使い方を間違えるとトラブルを起こしてしまいます。

トラブルを起こさない為にも、エンディングノートのメリット、デメリットを把握して、有効に活用してもらえればと思います。

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エンディングノートとは?

年々認知度が高まってるとはいえ、まだ見たことない方や、聞いたことない方もいると思いますので、簡単に説明します。

エンディングノートとは、自分にもしもの時が来た時に備えて、認知症・介護・医療・葬儀・お墓・相続などの分野ついて、自分の考えを家族や残される人のために書き記しておくノートです。

本屋に行くと色々なエンディングノートが並んでいるので、一度目を通していただくと、エンディングノートがどんなものか理解しやすくなると思います。

離れている家族や、なかなか本音を言えない人に向けて、自分の素直な気持ちを伝える手段としても優れています。

 

例えば、葬儀の時に連絡して欲しい人の連絡先リスト、終末期の医療、死後の臓器提供、加入している保険の記録、お墓のことなど、残された家族が相続手続きや、事務作業で困らない様に、記録しておくことができます。

他にも介護の希望や、介護費用をどうするのか、かかりつけの病院、葬儀の細かい段取りなども書いておくと家族は助かるでしょう。

 

現代だとインターネット関係の契約先やパスワード、取引のあるネット銀行などの情報も残しておくのが良いかなと思います。

このように自分の大切な情報や、希望を伝えれる点でエンディングノートはとても優れています。

このノート1冊あれば、家族が困らないという所まで作り込むこともできます。

半面、書き方によっては家族が困ってしまう状況も考えられます。

エンディングノート作成の注意点

エンディングノートは内容も多岐にわたるため、これを作ってしまえばもう安心と思ってしまう方も多いかなと思います。

実はエンディングノートには法的な効力は一切ありません。

法的な効力が一切ないということは、エンディングノートに書かれている葬儀の希望などを、無視しても何にも問題はないということです。

 

例えば遺言などは、法的に有効な作成の仕方をすれば、その通りの効果が発生します。周りの人がそれを無視することはできません。

それに対してエンディングノートはただのノートです。

仮にエンディングノートに財産の分け方などを指示していても、法的な効力はありませんので、相続人が全く違う内容の遺産分割協議をしても、全く問題はなく、遺産分割協議が有効になります。

 

この様に、エンディングノートはあくまでも本人の希望が記載してある、ノートでしかありません。

もちろん家族が意思を尊重して、その通りに動いてくれることのが多いと思います。

ですが財産の分け方など、法律的に重要な事項をエンディングノートに書いてしまうことで、逆に遺産分割協議が揉めてしまうこともあると思います。

 

エンディングノートを作った意思とは違う結果ですよね?

こうならない為にも、エンディングノートには法的効果がないこと、家族の行動を制限することが出来ない事を理解した上で、エンディングノート作る必要があります。

エンディングノートの活用方法

ではどんな風に作っていけば良いのか?

私なりの考えをお伝えします。

自分以外が知らない情報で、知らないと家族が困ってしまう情報を優先的に記載しましょう。

 

例えばインターネットを通じて課金されているサイトや、ネット銀行。

また葬儀に呼んだり、訃報を伝えたい友人知人の連絡先。

このような情報は、一緒に生活してても分かりませんので、優先的に記載して欲しい内容です。

 

後はご家族への気持ちです。

これが一番重要かもしれません。

なかなか恥ずかしくて言えない感謝の気持ちなども、文章であったら伝えれるかも知れません。

 

最後に、エンディングノートを作成したことは、家族に知らすべきです。内容は見せなくても大丈夫です。

そういったノートがあるんだということで、もしもの時に家族はとても安心できます。

なかなか自分の亡き後のことを考えて、エンディングノートを作るのは大変ですが、大変さを乗り越えると、大切な家族に迷惑をかけないことができますので、是非エンディングノートの作成を検討してみて下さい。

 

認知症対策は事前の準備が重要です。

今回は認知症対策について説明していきます。

2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になると言われています。

そんな時代を迎える中、認知症になってしまった時の法律関係はどうなるのか?

また事前にできる対策にはどんなものがあるのかを説明してきます。

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預貯金がおろせない?

相続が発生した時、亡くなられた相続人名義の口座が凍結されてしまう事を知っている方も多いでしょう。

では口座の名義人が認知症になった時、口座はどうなるでしょう?

実は相続発生時と同じように、口座は凍結されてしまいます。

預貯金がおろせなくなります。

この事を知らない方は多いと思います。

 

例えば家族が認知症になってしまい、施設に入る事になったとします。

最初にまとまったお金が必要なので、定期預金を解約しに、家族が銀行に行って、定期預金を解約しようとしたとします。

窓口の方から「ご本人はどうされたのですか?」などと聞かれ、「実は認知症がひどくなって、施設に入る事になったのです。」と答えると・・・。

「口座の解約はできません。成年後見制度を利用して下さい」などと言われる可能性があります。

 

口座の凍結です。

認知症になった場合も口座は凍結されてしまうのです。

 

困りますよね?

相続と違って、認知症になった方は当然生活していかなければなりません。

お金はどうしたって必要です。

でも口座からは降ろせません。

そんな時はどうするのか?

成年後見制度を利用する必要が出てきます。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは認知症などで、判断能力が低下したり、財産管理能力が衰えてしまった時に利用する制度になります。

 

成年後見制度には法定後見と任意後見という2つの制度があります。

法定後見・・・本人が既に判断能力が衰えてしまってから利用する制度

任意後見・・・本人の判断能力がまだしっかりしている状態で、あらかじめ後見人と契約を交わしておく制度

 

上記で説明した銀行に行った時に、口座が凍結されてしまった時に利用する制度は法定後見になります。

すでに認知症になってしまっていて、判断能力は衰えてしまっているので、法定後見を利用することになります。

法定後見制度では、判断能力の衰えの段階に応じて、成年後見・保佐・補助の3類型に分かれます。

法定後見制度は本人や本人の家族など一定の者から、家庭裁判所に申し出てスタートすることになります。

後は家庭裁判所の判断で、法定後見人が指名され、判断能力が衰えた方の財産の管理や身上監護が始まります。

認知症対策に有効な任意後見制度

ではもうひとつの制度、任意後見制度とはどんな制度なのでしょうか?

こちらはまだ元気な内に、信頼できる家族でも、専門家(士業)でも良いのですが、これらの人と事前に任意後見契約をして、判断能力等が衰えてしまった時に、後見の仕事をお願いする内容になります。

 

認知症等になる前に、契約をする必要がありますので、認知症対策として有効です。

法定後見制度では、自ら後見人になる人を選べません。

家庭裁判所が選びます。

仮に家族や信頼できる人を推薦したとしても、財産額や、住んでいる地域など、様々な要因から家庭裁判所がその信頼できる人を後見人に選ばない可能性があります。

 

しかし、任意後見制度の場合は、あくまで契約ですし、本人が判断能力がある内に契約していますので、実際に認知症等になった時には、契約が発効して、契約の相手方が後見人に就任することができます。

このように任意後見制度の場合は、信頼できる人に事前にお願いすることによって、本人の希望する人に、後見人になってもらうことが可能です。

そのため、認知症対策として、有効な手段となります。

まとめ

今回の記事は認知症等で判断能力が衰えてしまった時に、現在の世の中で使える利用できる制度の概略を説明しました。

両制度ともまだまだ課題があり、これから様々な点で変更があると思います。

ただ相続における遺言の様に、認知症に備えて任意後見という制度があるのだなということや、仮に何も備えてなくても、成年後見という制度で、判断能力が衰えてしまった人のサポートがされているという事を知ってもらえれば、嬉しいです。