相続人が外国に住んでいる場合の相続手続

世の中の生活の多様化に伴い、外国に移住している人も増えてきています。

もし相続人の中に外国在住の人がいた場合はどうするのでしょうか?

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外国在住の相続人がいる際の相続手続き

相続が発生して、相続手続きをする時に必要なのが、相続人全員の印鑑証明書です。

遺言を残さず亡くなった場合、相続人全員で遺産を誰がどれぐらい相続するのか、決めないといけません。

この話し合いを遺産分割協議といいます。

例えば妻は自宅の不動産、長男は○○銀行の預貯金、長女は○○証券にある○○会社の株式といった具合に、誰が何を相続するか話し合いして、決定します。

この決定内容を書面にしたものが、遺産分割協議書です。

 

遺産分割協議書には相続人全員の実印での押印と、印鑑証明書が必要です。

この時に相続人の一人が外国在住で日本での住所がなく、印鑑登録をしてないとなると、印鑑証明書を提出する事ができません。

その時にどうするか?ということになります。

この場合印鑑証明書の代わりに「サイン証明書」を使う事になります。

 

サイン証明書とは何か?

サイン証明書(署名証明書)とは、外国在住で日本に住所のない人の印鑑証明書の代わりになるものです。

海外の在外公館が発行します。

印影の代わりにサイン(署名)を本人のものと証明してくれます。

 

この書面が日本での相続手続きに必須となります。

外国在住の相続人が現地の在外公館に出向き、遺産分割協議書に面前でサインをして、それを本人のものと証明した書類になります。

遺産分割協議書はなくても、単独でサインのみの証明をしてもらうことも可能です。

 

サイン証明書の注意点

日本での相続手続きは、サイン証明書は原則、原本が必要になります。原本還付してくれる金融機関がほとんどですが、場合によっては、原本が戻ってこない場合もありますので、必要通数などを事前に金融機関に確認をしたほうが無難です。

 

外国との書類のやり取りになりますので、郵送にも時間がかかります。万が一書類に不備があったりすると、時間と費用が膨大にかかってしまいますので、各金融機関との事前相談はかかせません。

 

外国在住の相続人の住所を証明するには?

相続財産に不動産があり、外国在住の相続人がその不動産を相続するとなると、外国在住相続人の住民票が必要になります。

日本にいる相続人なら、住民票や戸籍の附票などで、住所の証明ができますが、当然日本に住所がないと、住民票は発行されません。

その時に必要になるのが、「在留証明書」になります。

 

この書面は海外の住んでいる日本人がどこに住んでいるのかを、在外公館が証明してくれる書面になります。

住民票の代わりです。

この書面を使って、海外在住の相続人の住所を証明して、相続手続きをすることになります。

 

在留証明書の注意点

この書類もサイン証明書と同じように、現地の在外公館に相続人自身が足を運んで、発行する必要があります。

その為、書類の不備や通数などを、事前に金融機関や法務局などと相談して、時間に余裕を持った手続きが必要になります。

 

事前の確認がとにかく大事

相続人がどこの国に在住しているかにより、サイン証明書等の様式などが違ってきます。

そのため、国によっては、サイン証明で手続きが出来ない場合も考えられますので、繰り返しになりますが、事前の金融機関への確認が大事になってきます。

 

また海外在住の相続人にも、連絡をして、現地の在外公館などに確認してもらうことが必要です。

発行に必要な書類や当日の準備など、十分な準備をしてもらい、慎重に相続手続きをすすめる必要があります。

 

また日本の金融機関もすべての相続手続きが共通ではありません。各金融機関毎、また各支店毎に必要書類や、対応が違うことがあります。

担当者によっても違うこともあります。

 

すべて共通ではないと認識していた方が良いです。

相続手続きで余計な時間、費用、ストレスを抱えない様に、事前の準備を入念に行って手続きにあたって下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

相続税の基本~相続発生の際に検討すること

相続と聞くと、相続税を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?

今回の記事では相続税の基本的な考え方をお伝えします。

相続税の詳しい内容は、税理士の先生の専門分野になりますので、あくまで基本事項となります。

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相続税とは

相続税は人の死亡が発生して、財産が移転したことにより、その財産を受け取った方に課税される税金になります。

 

相続が発生すると、すべての相続に相続税がかかる様に思われますが、実際は一定の金額以上を相続する際に発生します。

 

色々細かい規定がありますが、今回の記事では、身内に相続が発生した際に、税理士の先生への相談が必要になる基準的なものを説明していきたいと思います。

 

税理士への相談目安

相続財産の調査

相続税を考えるには、まず相続財産の調査が必要になります。

故人の財産をすべてを洗い出す作業です。

具体的には

・各金融機関(銀行、証券会社等)の口座残高調査~相続人が把握している口座だけでなく、口座があると考えれるすべての調査が必要になります。

※家族に内緒で銀行の貸金庫に株券を持っている場合などもあり得ます。

・故人名義の不動産の調査~住んでいる土地建物だけでなく、前面道路や、地方に持っている土地などすべての調査が必要です。

名寄帳を取得しましょう。

名寄帳とは、その人が市町村内に所有している課税固定資産の一覧です。
複数の市町村に不動産を所有している場合は、各市町村で取得が必要です。
名寄帳を見る事で不動産の漏れを防ぐことができます。

注意点として名寄帳は課税される不動産しか記載されてない場合もありますので、課税されていない不動産(未登記など)は、記載がない可能性があります。

不動産謄本の取得をして調査をします。
ここでは詳しく説明しませんが、共同担保目録付きの謄本の取得をおすすめします。

・生命保険も確認~生命保険金は相続財産ではなく、受取人固有の財産ですが、相続税算定にはみなし相続財産として、金額の確認が必要です。
・自宅にあるタンス預金である現金、動産(宝石など)なでも、調査が必要です。

上記の調査から相続財産の総額を割り出します。

 

相続人の調査

法定相続人の数が重要になります。

 

法定相続人とは、民法で定められた相続法に基づく相続人です。
遺言で財産受け取らない人がいるとかは関係ありません。

 

戸籍から把握できる、相続人の数を割り出します。

 

これは相続手続きで必要な故人の出生から死亡までの戸籍を集めて、調査します。

 

相続税がかからない場合

相続財産が一定の金額以下の場合は相続税の申告は必要ありません。

 

一定の金額とはいくらか?

3000万円+相続人の数×600万

上記計算式で出した金額より相続財産の合計が少なければ、相続税のことを考える必要はありません。

 

例えば、夫が亡くなり、相続人が妻と子供2人の場合

3000万円+3(妻、子供2人)×600万=4800万

相続財産が4800万以下の場合は相続税がかかりません。

 

相続人が一人だけの場合

3000万円+1×600万円=3600万円

相続財産が3600万以下の場合は、相続税がかかりません。

 

相続人が5人いる場合

3000万円+5×600万=6000万円

相続財産が6000万以下の場合は、相続税がかかりません。

 

相続税の仕組みは上記の様になっています。

 

皆さんの身内で相続が発生した際に、相続財産の調査と相続人の数が確定した時に、財産価格があからさまに、上記計算式に満たない場合は、税理士への相談も必要ありません。

 

ただあからさまに価格が超える場合と、超えるかどうか際どい金額の時は、税理士の先生に相談しましょう。

 

超えないと勝手に判断して相続税申告をしないと、使えるはずの相続税控除が使えなかったり、税金逃れと見られてしまう可能性もありますので。

 

また遺産分割は、相続税が発生する可能性がある場合は、税理士の先生にも相談しておこないましょう。

 

遺産分割の仕方で相続税の金額も変わってきます。
妻が相続する場合と、息子が相続する場合でも税額は変わります。
誰が相続するかにもよって、使える控除額などが違ってくるからです。

 

まとめ

相続税の申告は、すべての相続に必要になるわけではありません。

相続財産の額、相続人の数、遺産分割の仕方にもよって、変わってきます。

相続人の数、財産を把握した時点で、税理士に相談する目安にしましょう。

 

最後に遺言書作成する際も、相続税の検討が必要になる場合があります。
遺言書作成する予定の方は、税理士に相談する必要がある場合もあるので、注意が必要です。

 

 

 

 

 

 

相続手続きで困った?銀行口座の解約方法

相続が発生した際の銀行口座の解約方法の説明をしたいと思います。

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各銀行により若干手続き方法は変わりますが、基本ラインは同じです。

 

銀行口座解約に必要な手続きの流れ

1.戸籍の収集~相続人の確定

2.相続財産の確認~財産目録の作成

3.遺産分割協議書作成~相続人全員での協議

4.その他必要書類の準備

5.口座解約

 

順番に説明していきます。

1.戸籍収集について

相続人が誰であるのかの確定の為に必要になります。

故人の出生から死亡までのすべての連続した戸籍と、相続人の現在戸籍が必要になります。

相続関係により、戸籍の取得範囲も変わってきます。

兄弟姉妹が相続人だったりすると、故人の両親の出生からの戸籍も必要になったりします。

この場合は戸籍の取得枚数も膨大になりますし、時間もかかります。

2.相続財産の確認

上記1番の手続と同時進行で良いと思いますが、銀行側に故人の死亡を知らせて、口座の凍結手続きと、残高証明をしてもらいます。

これは次の手続である遺産分割協議のための調査となります。

銀行に把握している以外の口座などがないかの確認です。

金融商品購入のための口座があったり、相続人が気づいていない口座等が見つかる事も多々あります。

 

3.遺産分割協議書作成

相続手続きのメイン部分になります。

相続人全員で故人の相続財産をどのように分けるか、話し合いを行います。

A銀行の口座は妻○○が相続する。B銀行の口座は長男の○○が相続する。といった具合に、具体的に決定していきます。

すべての財産について、協議が終わったらこれを書面にします。

これが遺産分割協議書です。相続人全員の署名、実印での押印と印鑑証明書が必要になります。

 

※遺産分割協議書は相続手続きに必須の書類ではありません。
各銀行には相続手続きの用紙があり、その書類にすべての相続人が署名、押印すればその銀行の手続は可能になります。
ただ金融機関毎に押印作業等が必要になりますので、複数銀行口座などがある場合は遺産分割協議書を作成した方が手続きは楽になります。

 

4.その他必要書類の準備

戸籍以外の必要書類も含めて、必要書類を一覧にしておきます。

 

・被相続人(故人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

・相続人の現在戸籍

・遺産分割協議書

・相続人全員の印鑑証明書

・銀行所定の相続手続き書類

・手続き予定の口座の通帳、キャッシュカード等

 

※通帳やキャッシュカードは紛失していても、その旨を申し出れば手続きは可能になります。

 

他にも金融機関によっては必要になる書類がある場合があります。

故人の最後の住所の確認のための、住民票の除票など。

また相続人に未成年者や認知症の人がいたりすると、後見人の選任審判書や、特別代理人の選任審判書など、遺産分割協議書に署名した人の証明書が必要になったりします。

 

5.口座解約

すべての書類が揃ったら、銀行に申請して解約手続き完了になります。

 

銀行口座解約の実際

必要書類等は上記に記載した通りですが、実際の流れは下記のようになります。

 

・銀行に故人が死亡したことを通知 死亡届や、死亡の記載のある戸籍、住民票等と、通帳などを銀行側に持参して、相続手続きに必要な書類の案内をもらい、残高証明や他口座がないかの調査をしてもらいます。

 

・その後戸籍収集を開始。戸籍収集は相続関係次第では、何十通も戸籍が必要になります。昔の達筆な書体を読み込んだり、空襲で戸籍が焼失していたりと、戸籍収集だけで、数カ月かかることもあります。

 

・相続人全員確定した段階で、相続財産の内訳を知らせて、遺産の分け方を協議。スムーズにいけば、この後金融機関に書類提出。銀行口座が一つだけの方もあまりいないので、口座残高が多い所から書類提出していきます。

書類は原本提出が基本なので、各銀行に同時に申請はできないことが多いです。

 

・書類提出から2週間から3週間ぐらいで、解約手続きが完了されて、お金が振り込まれることが大半です。

 

まとめ

どうでしたでしょうか?

思ったより面倒なことが相続できたのではないでしょうか。

各金融機関により、対応も様々ですので、口座が複数あると骨の折れる作業になります。

遺言書がある場合などは、集める書類や手続き方法が簡略化されます。

相続人に未成年者や認知症の方がいても、手続きがスムーズにすすめられます。

このブログを通じて、相続の知識を学んでもらえればと思います。

 

不動産相続登記の現場

相続が発生した際の手続きの山場である相続登記(不動産の名義変更)の現場をお伝えしていきます。

故人の遺産の中に不動産があった場合のケースになります。

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相続登記は絶対必要?

義務ではありません。

義務ではないの意味は、相続登記しなくても、罰則等があるわけではいということです。

これは相続登記に限らず、不動産登記のすべてに言えることです。

では相続登記しない場合は、どんなデメリットがあるのでしょうか?

デメリットその1.故人の名義のままでは、売却や賃貸等、処分がしづらい

故人の不動産を誰も使わないから、売却しようと思い、買い手が見つかったとしても、名義が故人のままでは売買をして、買い手に名義を移すことができません。

デメリットその2.相続関係が複雑化する

亡くなった父所有の不動産を、名義変更せずにそのままにしていて、今度は長男や長女が亡くなったとします。

するとどうでしょうか?

この不動産は誰が所有しているのでしょうか?

そして名義変更できるのでしょうか?

所有者は相続関係次第ですし、名義変更は可能です。

ただとても複雑な相続登記になってくるので、時間、費用共にかかってきます。

相続登記の必要書類

実際に相続登記する際に必要になる書類を見て行きましょう。

・被相続人(故人のこと)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

※厳密には相続登記の場合は、生殖年齢(10歳前後)からで可能と言われてますが、銀行等金融機関では出生から求められる場合が多いです。

・相続人の現在戸籍

・被相続人の住民票の除票

・不動産を相続する人の住民票

・遺産分割協議書

・相続人全員の印鑑証明書

・固定資産評価証明書

上記は遺言がなく、遺産分割協議で不動産を相続する人を決めた場合の書類です。

それ以外には、法定相続分通りに相続する場合や、遺言書がある場合、遺産分割調停等で相続する人が決まった場合など、不動産を相続する人が決まった過程により、必要書類が変わってきます。

文章にすればこれだけですが、一般の方がこれらの書類を全部集めるのは、骨の折れる作業になります。

相続人が多数になる場合

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議をして、誰が被相続人の財産を取得するか決めることが通常になります。

父、母、長男、長女の人家族で、父がなくなった場合の推定相続人は、母、長男、長女の3人になります。

上記のように、相続人が少なく、親子関係の中だけで、相続人が決まる場合は手続きも比較的楽ですが、例えば次の家族の場合などはどうでしょうか?

相続人多数の家族例(数次相続、代襲相続ありの例)

奥さんは以前に死去。子供はいない。兄弟が被相続人以外に5人。
兄弟の内、3人は以前に死去。

亡くなった兄弟3人にはそれぞれ、甥姪が2人ずつ。甥姪の内の1人も、相続発生後、相続登記する前に死去。

亡くなった甥には妻と子供が2人いる。

上記の様な親族構成の場合、相続人は何人になるでしょうか?

答えは10人になります。

内訳は被相続人の兄弟で生存している2人。亡くなった兄弟の子供である甥姪で、生存している5人。

そして亡くなってしまった甥の妻と子供2人で3人。

合計すると、2+5+3で10人になります。

相続関係を証明するには?

上記の相続関係を証するにはどれくらいの手間がかかるでしょうか?

証明する事柄
  • 被相続人が死亡したこと
  • 奥さんがすでに死亡していること
  • 子供がいないこと
  • 両親が死亡していること
  • 兄弟が6人であること
  • 兄弟の内2人が生存していること
  • 兄弟の内3人が死亡していること
  • 亡くなった兄弟の甥姪が生存していること
  • 甥の一人が相続発生後に死亡していること
  • 亡くなった甥の家族が妻と子供2人であること
上記を証明する戸籍
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍
  • 被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍
  • 生存している兄弟の現在戸籍
  • 死亡した兄弟の出生から死亡までの戸籍
  • 甥姪の現在戸籍
  • 亡くなった甥の出生から死亡までの戸籍
  • 亡くなった甥の妻・子供2人の現在戸籍

結局何通必要になるか分かりません。

骨の折れる作業になることは想像できると思います。

その上で、10人の相続人全員に遺産分割協議書に署名、押印してもらい、印鑑証明書を提出してもらうという作業が必要になります。

そして上記に記載した他の必要書類を集めて、登記申請書を作成して、法務局に提出することになります。

遺産分割協議書の書き方、登記申請書の書き方なども調べて、必要事項を記載しないと、相続登記はできません。

このように相続の現場では、相続人の親族構成により、とても複雑な相続になる場合も多々あります。

ちなみに、相続例で説明した相続人10人のものは、私が仕事の中で経験した相続例を、簡易化したものになります。

実際は相続人が27人という実例でした。

まとめ

相続はとても複雑になるケースも多々あります。

今回挙げた例に加えて、相続人が未成年、認知症、行方不明、外国在住など、様々なことが考えられます。

相続を複雑にしない為には、やはり遺言書が一番大切になってきます。

大切な家族に負担をかけないためにも、相続の知識を少しずつ学んでみて下さい。

 

 

 

 

 

 

遺言書の失敗例!こんな遺言書の書き方には注意しましょう。

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この記事では遺言書を自分で作る際の注意点を説明します。

一般の方が間違いやすい点を挙げていきますので、参考にしてみて下さい。

遺言書を作る際の注意点

遺言書は法律で定められた方式に沿って作らないと、無効になってしまいます。

良く使われる遺言書の形式としては、公正証書遺言自筆証書遺言があります。

公正証書遺言は公証役場で作成する遺言書になります。

そのため公証人という法律のプロの方の目が入りますので、特段気にせずとも、法的に無効になるような遺言書になることは、ほとんどありません。

注意すべきは自筆証書遺言です。

自筆証書遺言は、遺言者本人が自筆で作っていくものになります。

そのため、法律家の目が入っていませんので、意図した効果が発生しない遺言や、そもそも無効になってしまう遺言が作られる可能性が高くなります。

自筆証書遺言作成のポイント

・全文自筆で作成
・日付、署名、押印

上記が自筆証書遺言作成の絶対条件です。

どれか一つでも欠けていると、無効になります。

妻にすべての財産を相続させる自筆証書遺言の例文

          遺言書

私山田太郎(昭和22年2月2日生)は妻山田花子(昭和24年5月5日生)にすべての財産を相続させる。

令和2年5月5日 山田太郎 印

 

上記の文言を遺言者本人の山田太郎さんが、全文を自筆で記入して、印鑑を押せは遺言書として有効になります。

失敗例

・日付がない、もしくは日付を特定できない

※令和2年5月吉日など

・押印がない

※印鑑は実印でなくても、問題ありませんが、実印で押す方が良いでしょう。

・パソコンで入力してしまう

※手書きだと間違えてしまうからと、パソコンで入力した書面に、押印などしても、無効になってしまいます。

上記の条件をクリアーした上で、失敗例を説明していきます。

遺言書の失敗例

道徳的な文言だけの遺言

失敗例:お母さんの生活をしっかり支えて、兄弟仲良く暮らしていくこと。
月に1回は母さんの様子を見に、実家へ行くこと。
父さんはお前たちと一緒に暮らせて幸せでした。

上記の様な文は遺言書の中に記載することは問題ありませんが、財産をどのように分けるのかなどの記載が一切ないので、遺言書として機能しませんので、注意が必要です。

不動産の特定の仕方の間違い

失敗例:神奈川県○○市○○4-5-3の自宅を妻に相続させる

不動産の特定を住所でしてしまった例です。

不動産の名義変更(相続登記)をするには、不動産登記簿に記載されている地番(土地)や家屋番号(建物)で特定する必要があります。

場所によっては、隣地の不動産と同住所という可能性もあります。

このような記載の仕方だと、遺言書通りの相続登記が出来なくなる可能性があります。

※遺言書全体の意図から相続登記もできるケースもあります。

私道が漏れているケース

上記のケースで説明したとおり、しっかりと不動産登記簿通りに不動産を特定したけど、敷地前の私道にも持分を持っていた場合などです。

一戸建ての例ですと、通常土地と建物だけだと考えてしまいますが、実は自宅前の道路も近隣の住宅と共に、私道を持分で所有しているケースがあります。

この場合私道の記載がないと、私道部分は遺言書通りに相続登記ができず、私道部分だけ、相続人全員で遺産分割協議をする必要が出てきてしまいます。

相続人以外に相続させてしまうケース

失敗例:長男の妻である○○に、○○銀行○○支店(普通)1234567の預金を相続させる。

同居して、長男と一緒に自分のお世話をしてくれた、義理の娘である、長男の妻に一定の財産を残してあげたい時の様な場合です。

他にも孫に教育資金として、一定の財産を残してあげたい場合に、失敗してしまう例です。

間違い箇所は太字になっている「相続させる」の文言です。

この文言を使えるのは相続人に対してだけです。

長男の妻や、孫(息子は生きている場合)は相続人になりません。

なのでこの場合は「遺贈(いぞう)する」と記載します。

遺言で贈与するという意味です。

遺言を作るとなると、どうしても相続させるという風に考えてしまうのが、通常だと思いますが、相続人以外に財産を残す場合は注意が必要です。

まとめ

遺言書を作る一番の理由は、遺産分割協議をしないようにして、相続人間での争いを無くすことです。

そして自分の財産を大切な家族のために残してあげることです。

その為には面倒ですが、ルールに沿った記載方法が必要になります。

このブログでも、読んで頂いた方の役に立つ内容を今後も発信していきますので、参考にしてみて下さい。

 

 

 

 

遺言書が見つかった場合にするべきことは?注意点もあります!

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相続時に遺言書があり、その遺言書が有効であれば、基本的には遺言書の内容が優先されます。

 

しかし、遺言書にも色々と種類があり、種類によって遺言書が見つかったときの対応方法は異なるので注意が必要です。

 

そこで今回は、遺言書が見つかったときはどのように対応すべきか?注意点は何か?という点について解説していきます。

 

ちなみに、遺言書がない場合は法律に従って相続する(法定相続)か、相続人同士が協議して相続(遺産分割協議)します。

 

 

遺言書が見つかったら検認が必要

 

まず、遺言書が見つかったら検認が必要である点は覚えておきしょう。

 

検認とは、相続人に対して「遺言書の存在」と「遺言書の内容」を知らせることであり、目的は遺言書の偽造を防ぐことです。

 

ただし、検認は遺言書が法的に有効であると証明されるものではなく、あくまで相続人へ「遺言書の存在と内容」を知らせることに留まります。

 

 

検認が必要な遺言書の種類

 

また、遺言書にも色々種類があり、遺言書の種類によって検認が必要か不要かは変わってきます。

 

一般的な遺言書の中でいうと、自筆証書遺言は検認が必要であり、公正証書遺言書は検認が不要です。

 

というのも、自筆証書遺言書は被相続人(亡くなった人)が生前に自ら作成した遺言書であり、第三者が管理・保管しているわけではありません。

 

一方、公正証書遺言書は公証人の元で遺言書を作成し、そのまま公証役場で保管されます。

 

つまり、自筆証書遺言書は偽造の恐れがあるので検認が必要であり、公正証書遺言書の場合は偽造の心配がないので検認は不要というわけです。

 

 

遺言書の種類を確認する方法

 

遺言書の種類を確認する方法は、遺言書に「遺言公正証書」と書かれているかどうかで判断できます。

 

「遺言公正証書」と書かれている遺言書は公正証書遺言書であり、それ以外は自筆証書遺言書の可能性が高いです。

 

今回は省略しましたが、自筆証書遺言書ではなく「秘密証書遺言」の可能性があるものの、秘密証書遺言だとしても検認は必要です。

 

つまり、「遺言公正証書」の記載がなければ自筆証書遺言書か秘密証書遺言なので、そのときは検認が必要であると覚えておきましょう。

 

なお、公正証書遺言書の場合は、遺言書の正本や謄本が遺言者に渡されます。

そのため、「遺言公正証書」の記載以外に、そもそも正本や謄本があるはずです。

 

 

遺言書は絶対に開封しない

 

また、遺言書が見つかり、それが自筆証書遺言書か秘密証書遺言であれば、検認するまで絶対に開封してはいけません。

 

もし開封してしまうと、法律で5万円以下の過料と取られる可能性があります。

 

開封したからといって遺言書が無効になるわけではありませんが、偽造を疑われるリスクがあります。

 

「遺言書」である旨は封筒の目立つ部分に明記されていますし、基本的に開封する部分に押印がされているので、一目で「開封してはいけないもの」と分かるはずです。

 

 

遺言書が見つかったら家庭裁判所で手続きしよう

 

遺言書が見つかったら、家庭裁判所で検認の手続きをしましょう。

検認の流れは以下の通りです。

 

・検認の申し立て

・検認期日の通知

・検認の実施

・検認済み証明書の発行および検認済み通知

 

手続き自体は難しくありませんが、先ほどの通り「検認=遺言書の証明」ではありません。

 

仮に、相続人の中に遺言書を無効と判断する、あるいは内容に不服があるという人がいた場合は、裁判や調停になる可能性もあります。

 

なお、公正証書遺言書の場合は検認手続きが不要なので、公正証書遺言書の内容に沿って遺産分割することができます。

 

ただし、手元にあるはずの正本や謄本がない場合は、公正証書遺言書の有無を確認するため、公証役場に確認する必要がある点は覚えておきましょう。

 

相続時の代償金とは?遺産分割で代償分割には要注意!

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相続をするときには、「代償金」という金銭が発生することがあります。

 

代償金が発生するのは、主に不動産を相続するケースなので、相続時に不動産がある場合は注意しましょう。

 

結論からいうと、不動産を相続するときは、代償金を伴う代償分割ではなく「売却(換価分割)」を選択した方が良いです。

 

そこで今回は、代償金とは何か?代償分割とは何か?なぜ不動産を相続するときは、売却した方が良いのか?について解説していきます。

 

 

代償金は代償分割のときに発生する

 

代償金は、不動産を相続する際に「代償分割」を選択したときに発生するお金です。

 

代償分割とは何か?というと、相続人が遺産を相続したとき、その遺産と同じ価値の代償金をほかの相続人に支払うということです。(後で事例にて解説します)

 

 

代償金は不動産を相続する場合に多い

 

代償金が発生するケースは色々ありますが、不動産を相続したケースが多いです。

というのも、代償分割が発生するケースは、「遺産が分けにくい」というケースだからです。

 

たとえば、相続する財産が5,000万円という現金だけの場合は、その現金を相続人で分ければ良いです。

 

そのため、配分さえ決めてしまえば、特に問題なく分けることができます。

 

しかし、土地やマンションといった不動産を相続する場合はどうでしょう?

 

不動産にも色々な分割方法があります(後で詳しく話します)が、不動産は現金に比べて相続時に「分けにくい」資産であることは分かると思います。

 

一方、ほかの財産は不動産ほど分けにくいものではないので、必然的に代償金が発生する代償分割は、相続する財産が不動産のケースが多いのです。

 

 

代償金が発生する事例

 

たとえば、AさんとBさんという姉妹がいて、お父様が亡くなったことで土地を相続したとします。

 

このケースで代償分割する場合、たとえばAさんが土地を所有したら、AさんはBさんにその土地と同じ価値の代償金を支払う必要があります。

 

一般的に、土地の価値は不動産鑑定士などに算出してもらい、その価値がそのまま代償金になるという仕組みです。

 

仮に、土地の価値が1,800万円であれば、AさんはBさんに1,800万円の代償金を支払う必要があります。

 

 

代償金に関する2の注意点

 

ただし、代償金を伴う代償分割を選択した場合、以下2つの注意点があります。

 

経済的負担が大きくなる

贈与にならないようにする

 

まず、代償金を支払う人の経済的負担は大きいです。

特に、不動産の価値は1,000万円単位のケースも多いため、相続によって1,000万円単位の債務を負う可能性があります。

 

そのため、代償金を現金で支払えないケースも多く、その場合はローンを組んで代償金を支払うケースもあります。

 

また、代償分割にする場合は、遺産分割協議書の中で「代償分割」する旨を明記する必要がある点には注意が必要です。

 

そうしないと、代償金が贈与扱いになり、高額な税率が課せられるリスクがあります。

そのため、弁護士や司法書士に相談の元、しっかりと遺産分割協議書を作成した方が良いでしょう。

 

 

不動産を相続したら売却した方が良い理由

 

このように、代償金が発生する代償分割は、債務を負うリスクや贈与税を負うリスクなどがあります。

 

そのため、代償分割をするなら、不動産を売却して売却益を分配する(換価分割)方が良いでしょう。

 

不動産を売却すれば現金化できるので、その現金を公平に分ければ後々揉めることもありません。

 

また、当然ながら代償金が発生しないので経済的負担も大きくなりませんし、贈与税がかかるリスクもありません。

 

そのため、はじめにいったように代償金を伴う代償分割をするくらいなら、不動産を売却した方が無難といえるでしょう。

 

相続登記は必要か?結論不要ですが相続登記した方が良いです

 

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不動産を相続するときは、被相続人(亡くなった人)の名義から相続人(相続する人)の名義へ変更します。

 

これを相続登記といいますが、実は相続登記することは義務ではありません。

つまり、相続した不動産を被相続の名義のまま放置していても問題ないのです。

 

しかし、相続登記しないとデメリットがあるので、相続登記はするべきです。

さらに、相続登記は義務化される方針でもあるので、この点も相続登記すべき理由の1つといえます。

 

このブログでは、相続登記した方が良い理由や、相続登記の義務化についてお話していきます。

 

 

不動産の相続登記をしないと手続きが面倒

 

相続登記した方が良い1つ目の理由は、不動産の相続登記をしないと手続きが面倒になるからです。

 

というのも、不動産の相続登記をする際は以下の資料が必要です。

 

・被相続人と相続人全員の戸(除)籍謄本・抄本

・被相続人と相続人全員の実印・印鑑証明

 

 

用意するのが面倒

 

厳密にいうと遺言書がある場合や法定相続する場合は異なりますが、たとえば遺産分割協議による相続の場合は上記が必要です。

 

要は、色々な書類が必要であり、用意するのが面倒なのです。

 

そのため、時間が経つほど書類集めに苦労して、相続登記したくても登記できない…という事態になりかねません。

 

 

事例:土地を売却したいケース

 

たとえば、相続人が兄弟3人だとして、親から相続した(相続登記はしていない)土地を売却するとします。

 

しかし、土地の売却は名義人しかできません。

そのため、土地の名義人を被相続人から相続人の名義に換える必要がありますが、たとえば兄弟の1人が海外に住んでおり、もう1人は連絡が取れない…となれば非常に面倒です。

 

まず、海外に住んでいる兄弟の分の書類を取得するために委任状を用意するか、一時帰国してもらう必要があります。

 

また、連絡が取れない兄弟は所在を明らかにしなければいけません。

 

一方、相続時に兄弟3人が顔を合わせていて相続登記していれば、こんなことにはならなかったはずです。

 

不動産の相続登記は必要か?と聞かれれば答えはNOですが、上記の理由から相続登記はした方が良いです。

 

 

相続人が増えると面倒

 

相続登記した方が良い2つ目の理由は、相続人が増えると面倒だからです。

 

というのも、時間が経つにつれて相続人が亡くなる可能性があります。

 

たとえば、相続人が亡くなれば相続人の子どもが相続する権利を得るので、相続人が増えたり複雑になったりする可能性があります。

 

仮に、相続人である兄が亡くなり、その子供である甥が相続する権利を持っているとしましょう。

 

しかし、もし甥に会ったこともなければ、連絡を取り合うことすら面倒ですし、相続登記した後にどうするのか?という話し合いもしにくいです。

 

そのため、相続登記は行った方が良いのです。

 

 

第三者に主張できない

 

仮に、法定相続(法律に従った相続)をすれば、相続登記しなくても不動産の権利は第三者に主張できます。

 

しかし、遺産分割協議によって法定相続とは違った分割にした場合は、相続登記しないと第三者に権利を主張できません。

 

このような状態だと非常にリスクが高いので、相続登記は必須といえるでしょう。

 

 

相続登記が義務化される予定

 

日本では、現在空き家が増えていることが社会問題なっています。

その空き家問題の原因の1つに、「相続登記していないケースが多く所有者が分からない」という点が挙げられます。

 

そのため、2020年を目途に相続登記は義務化される予定です。

 

まだ詳細は決定していませんが、場合によっては相続登記しないと罰金を支払うこともあるようなので、早めに相続登記の準備をしておいた方が良いでしょう。

 

このように、相続登記は面倒ではあるものの、結局は相続登記しない方が面倒な事態になるかもしれません。

 

そのため、相続する際は遅滞なく相続登記した方が良いです。

 

相続時の不動産は売却するのはベスト!その理由とは?

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私はメガバンクの相続に関する部署にいるので、当たり前ですが相続に関する相談を受けます。

 

といっても、基本的には当銀行の預金に関する相談がメインですが、たまに不動産を相続したときにどうすべきか?という相談を受けることもあります。

 

そのため、相続と不動産売却と税金に関しての知識も割と詳しくなりました

そんな私からすると、不動産を相続したなら「売却」という選択肢がベストかと思います。

 

もちろん、ケースバイケースではありますが、多くの場合は売却した方がメリットは大きいです。

 

今回は、そんな相続と不動産売却について話していきます。

 

 

不動産を相続する方法

 

不動産を相続する方法は以下4通りあります。

 

・現物分割:不動産を一人の相続人が取得

・代償分割:不動産を一人が相続しほかの相続人に相応の金銭を支払う

・共有:不動産を相続人で共有する

・換価分割:不動産を売却して売却益を相続人で分割する

 

上記の中でおすすめする相続方法が換価分割であり、その理由をシンプルにいうと「リスクや手間がないから」です。

 

以下より、換価分割した方が良い理由について解説します。

 

シチュエーションとしては、Aさん・Bさんという兄弟が相続人であり、父が所有する一戸建てを相続した…という想定で話を進めます。

 

 

現物分割のリスクは不公平感が出ること

 

現物分割は1人が不動産を所有するので、仮にAさんが一戸建てを所有したとしましょう。

 

その場合、一般的にはその一戸建ての時価(査定価格)と同じ財産を、Bさんは相続します。

 

仮に、一戸建ての査定価格が2,000万円であれば、Aさんは一戸建てを相続し、Bさんは2,000万円の現金を相続するというイメージです。

 

しかし、将来的に一戸建ての価値は上下するので、不公平感が出る可能性があります。

 

たとえば、その一戸建ての周辺が再開発されて、土地の価値が大きく上昇したとします。

その場合、Bさんからすれば「公平に相続したはずなのに納得いかない」と思うかもしれません。

 

もちろん、当時は公平に相続したのでAさんが悪いわけではありませんが、Bさんの気持ちも分かります。

 

もしかすると、この不公平感が原因でAさんとBさんの仲が悪くなるかもしれませんし、BさんがAさんに金銭を要求する事態に発展するかもしれません。

 

このようなリスクがあるので、相続時は不動産を売却して、売却益を公平に分けた方が良いのです。

 

 

代償分割のリスク

 

代償分割は、不動産を相続した人の金銭的負担が大きい点と、現物分割と同じく不公平感が出るリスクがあります。

 

代償分割の場合、Aさんは一戸建てを相続する代わりに、Bさんに対して一戸建ての時価である2,000万円の代償金を負います。

 

その金銭的な負担は大きいですし、現物分割と同じく「今後不動産価値が上下する」可能性があるのです。

 

このような事態にならないよう、相続時の不動産は売却した方が良いと言えるでしょう。

 

 

共有のリスク

 

共有のリスクは、売買や賃貸時に所有者全員の許可がいる点です。

共有するということは、相続する一戸建ての名義はAさんとBさんの共有になります。

 

共有になるということは、その一戸建てを売却・賃貸するときの契約書には、AさんとBさん両方の署名・捺印が必要なのです。

 

仮に、一戸建てを共有名義で相続した後に、賃貸に出していたとします。

そして、5年後にAさんが「まとまったお金が欲しいから売りたい」と主張したとしましょう。

 

しかし、Bさんは「賃貸をつづけたい」となれば、売ることはできません。

 

このように、共有すると売買・賃貸時に共有名義人全ての許可が必要なので、非常に面倒というデメリットがあります。

 

このような理由で、相続時の不動産は売却(換価分割)がベストというわけです。

 

 

遺留分とは何か?相続人なら絶対に知っておくべき言葉です

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「遺留分」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 

もしかすると、過去に相続を経験したことがある人でも、遺留分について良く分からない…という人もいるでしょう。

 

しかし、遺留分は割と重要な制度なので、相続人(相続を受ける人)は「遺留分」という言葉の意味と仕組みは知っておいた方が良いです。

 

今回は、そんな遺留分についてお話します。

 

 

遺留分は法定相続人を守る制度

 

遺留分は、法定相続人に認められている最低限の遺産取得分のことであり、相続人を守る制度です。

 

ちなみに、法定相続人とは法律で「相続人」と定められている人のことです。

 

相続が発生したとき、法定相続人は法定相続分…つまり法律に従って遺産を相続するのが一般的です(遺産分割協議をする場合もありますが)。

 

たとえば、相続人が配偶者と子供2人の場合、法定相続だと配偶者1/2・子供1/4・子供1/4が取り分です。

 

しかし、遺言がある場合は法定相続よりも基本的には遺言が優先されるので、法定相続人なのに「遺産をもらえない」という状態になりかねません。

 

このようなケースで、法定相続人は「遺留分」を主張し、最低限の遺産を守る(受け取る)ことができるのです。

 

 

遺留分は遺言でも侵害不可能

 

先ほどのように、遺留分は法定相続人の最低限の遺産を守るための制度です。

 

そのため、たとえば遺言書で遺留分を否定するような内容が書いてあっても、遺留分の確保が優先されます。

 

しかし、厳密にいうと遺言書に「遺留分を侵害する内容」を記載することは可能であり、その内容通りに相続されることがあります。

 

どういうことかというと、遺留分を主張するためには「遺留分侵害額請求」を行う必要があるのです。

 

 

遺留分侵害請求とは?

 

遺留分侵害請求とは、遺留分を主張することであり、遺留分侵害請求をしない限り遺留分の遺産をもらうことはできません。

 

遺留分侵害請求は、内容証明郵便を作成して、遺留分を侵害している人に郵送します。

 

たとえば、夫が遺言で「愛人に対して全ての遺産を相続する」と記載した場合、法定相続人である妻が、自分の遺留分を主張するために愛人に内容証明を郵送する…というイメージです。

 

また、遺留分侵害請求は相続を知った日から1年以内に行う必要があります。

 

 

遺留分侵害請求は弁護士に任せた方が良い

 

遺留分侵害請求は自分でもできますが、以下の理由で弁護士に任せた方が良いでしょう。

 

・内容証明を作成すること自体難しい

・相手との交渉をリードできる

・最悪訴訟の準備もスムーズ

・感情的にならないで済む

 

このような理由があるので、弁護士に任せてしまうことをおすすめします。

 

 

遺留分の割合は決まっている

 

次に、遺留分の割合の話です。

遺留分は割合が決まっており、その割合は法定相続の割合よりも小さいです。

 

というのも、相続人が遺留分を主張するということは、先ほどのように被相続人(亡くなった人)が不公平な遺産分配を遺言書に記載したときでしょう。

 

しかし、言い換えるとその分配比率が被相続人の「最期の希望」であり、それを完全に無視するわけにもいきません。

 

そのため、相続人を守るために遺留分という制度を用意しておくものの、被相続人の意志を尊重するために遺留分の割合は法定相続より小さいのです。

 

具体的には以下の通りです。

 

・直系尊属人のみが法定相続人:1/3

・上記以外:1/2

 

上記に該当しないケース…たとえば、兄弟・姉妹だけが法定相続人の場合には遺留分は認められません。

 

つまり、兄弟・姉妹は遺留分を主張できないので、被相続人の遺言書の内容通り相続されるということです。

 

 

直系尊属人のみが法定相続人のケース(遺留分1/3)

 

まず、直系尊属人とは親や子供のことです。

 

たとえば、Aさんが亡くなり、法定相続人がAさんの子供2人だとします。

しかし、Aさんは「愛人に全財産(1億円)を相続する」という遺言書を残したとします。

 

そのとき、子供2人が遺留分を主張すれば、1億円のうち1/3を受け取ることができます。

 

そのため、子供1人当たり「1億円×1/3(遺留分)×1/2(子供2人なので)=約1,666万円」が遺留分となります。

 

つまり、本来であれば1人5,000万円相続できたものの、遺留分のみの相続なので約1,666万円まで減額されるということです。

 

 

それ以外のケース(遺留分1/2)

 

先ほどと同じケースで、法定相続人が配偶者(直系尊属人ではない)のみだったとしましょう。

 

この場合、遺留分は「1億円×1/2(遺留分)=5,000万円」を遺留分として相続することができます。

 

本来であれば1億円を相続することができましたが、5,000万円に減額されていることが分かります。

 

このように、あまりハッピーな制度ではありませんが、遺留分という制度がある点は覚えておくと良いでしょう。

 

 

 

 

遺言書で遺産分割するときの注意点は?自筆証書遺言書は要注意!

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わたしはメガバンクに勤務しており、さらに相続に関する部署にいるので「遺言書」に触れる機会が多いです。

 

知っている人も多いと思いますが、相続時に被相続人(亡くなった人)が遺言書を残しているときは、基本的に遺言書の内容が優先されます。

 

ただし、相続人全員が遺言書の内容に反対する場合は、遺言書の内容に従う必要はありません。

 

とはいえ、遺言書がないと「遺産分割は法定相続に従うのか?」「遺産分割協議を作成するのか?」と揉めることが多い印象です。

 

そのため、遺言書があったった方が、遺産分割時にいわゆる「争族」に発展しない印象です。

 

そんな遺言書には「自筆証書遺言書」と「公正証書遺言」の2種類あり、それぞれ作成方法などが異なります。

 

結論からいうと、公正証書遺言書の方が確実な遺言書であり、自筆証書遺言書は注意点を知っておかないと、遺言書が無効になるリスクがあります。

 

今回は、そんな公正証書遺言書の内容と、自筆証書遺言書の注意点などについてのお話です。

 

 

公正証書遺言書は公証人に作成してもらう

 

まず、公正証書遺言書について。

 

公正証書遺言書は、公証役場などで「公証人」に作成してもらう遺言書です。

 

公証人が内容などをチェックしてくれるので、「形式が違う」などの要件不備で遺言書が無効になることはまずないでしょう。

 

ただ、公正証書遺言書の作成には、証人2人以上が立ち合い、公証人から本人確認や質問などを受けることになります。

 

そして、公証人が内容を記載し、その内容を証人に読み聞かせる…などの作業が必要な点は覚えておきましょう。

 

 

自筆証書は無効になるリスクあり

 

自筆証書遺言書は、遺言書を作成する人が、遺言書の文章・日付・氏名を自分で記載して、押印までする遺言書になります。

 

先ほど言ったようように、自筆証書遺言書は無効になるリスクがあるので要注意です。

 

 

 

形式によっては遺言書と認められない

 

自筆証書遺言書は公正証書遺言書と違い、(ほとんどのケースで)法律の知識がない人が遺言書を書くことになります。

 

そのため、形式が厳しく決まっており、その形式に違反している場合は「無効」になることもあります。

 

相続発生後に自筆証書遺言書が見つかった場合は、封を開けずに裁判所に持っていき「検認」という手続きを取ります。

 

ただ、検認を経たからといって自筆証書遺言書が有効というわけではなく、形式によっては無効になります。

 

そのため、遺言書としての効力が疑わしい場合や、遺言書の内容自体が明確でない場合などは、遺言書の内容を巡ってトラブルに発展する可能性があります。

 

つまり、本来はトラブルを起こさないため…そして被相続人の意思を尊重するための遺言書が、逆にトラブルの元になったり、意思が尊重されなかったりするケースがあるのです。

 

 

自筆証書遺言書で問題なるケース

 

では、実際に自筆証書遺言書で問題になるケースはどのようなケースかというと、たとえば

以下のようなケースです。

 

・日付が曖昧である(平成25年10月末日など)

・印鑑が押印されていない

・訂正方法が間違っている

・夫婦共同で遺言書に署名してしまっている

 

もしかしたら、え!?これだけで?と思う人もいるかもしれません。

そうなんです。これだけのことで無効になる可能性があるのです。

 

また、たとえば条件を付けすぎて複雑になり過ぎたり、相続させる財産が曖昧だったり…という理由で無効になったケースも聞いたことがあります。

 

遺言書が有効か無効かはケースバイケースで、さまざまな判例があるので一概にはいえません。

 

ただ、1つ言えることは自筆証書遺言書を作成するなら、確実に有効な遺言書になるように作成するということです。

 

もしくは、証人を探す…などの手間がかかるものの、公正証書遺言書を作成する方が確実でしょう。

 

遺言書を残したことで逆に相続人同士でトラブルに発展すれば、それは被相続人の意思に反しているといえます。

 

 

 

 

はじめに

 

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今回のブログでは、わたしがこのブログを開設しようと思ったキッカケなどを書かせてもらおうと思います。

 

プロフィールにも書きましたが、まずは簡単に自己紹介を…

 

わたしはメガバンクに勤務している30代の銀行マンです。

現在は相続に関係する部署に所属しているので、日々相続の相談に来るお客様に対応しています。

 

そんな、相続に関してプロであるわたしが、相続に関する正しい知識をお伝えしようと開設したのが本ブログです。

 

 

相続は難しい

 

わたしが本ブログを開設した理由の1つは、「相続は難しいことが多いから」という理由です。

 

みなさんは「相続」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?

 

恐らく、被相続人(亡くなった方)の資産をどうするか?遺言書はあるか?などが思い浮かぶと思います。

 

実はそれだけではなく、相続に関しては以下のようなことを考えなければいけません。

 

・そもそも生前贈与を考えるべきかのか?

・不動産はどのように相続するのがベストか?

・そもそも誰に相談すれば良いのか?

・相続人(相続する人)はどうやって特定すれば良いのか?

 

このように、相続が発生したとき…もしくは生前の間に考えなければいけないことがたくさんあります。

 

 

悩みはたくさんある

 

また、相続に伴い「行うべきこと」もあるので、相続に伴い色々悩みを抱えるものです。

 

代表的な例でいうと…

・自分が亡くなる前に生前贈与した方が良いのか?

・不動産を相続したが売却した方が良いのか?相続する兄弟で共有した方が良いのか?

 

などが挙げられるでしょう。

 

いずれも、わたしたち銀行マンだけでは解決できないこともありますが、そのときは税理士や司法書士などと相談しながら悩みを解決していきます。

 

いずれにしろ、相続が発生することで「行うべきこと」はたくさんあり、それに伴い「悩み」もたくさんあるのです。

 

 

気持ちが落ち込んでいる

 

そして、相続が発生しているということは、残念ながら大切な誰かが亡くなっているということです。

 

わたしが対応させていただいたお客さまの中にも、大切な人が亡くなり意気消沈している人はたくさんいました。

 

そのような状況で、先ほどいったように「行うべきこと」「悩み」をたくさん抱えることになるので、わたしの立場からは少しでも負担を和らげることができないかと日々考えています。

 

これが、わたしが本ブログを立ち上げた理由の1つです。

 

 

相続に関する正しい知識を得られない

 

また、対応したお客様の中には、相続に関する正しい知識を得ることができない…と悩んでいる人も多くいました。

 

もちろん、相続は自分達だけ全ての手続きを完了させることは難しいので、専門家に相談するケースが大半です。

 

しかし、相続方法などを自分できちんと判断するために、本を買ったりネットで調べたりする人は多くいます。

 

 

本を一冊読むのは大変

 

相続に関する知識を得るために最も多いのは、相続に関する本を読むことです。

しかし、本を読むといっても、そんな簡単に読める内容ではありません。

 

たとえば、遺言・生前贈与・法定相続人・路線価・登記…のように、相続は聞きなれない言葉がたくさん出てきます。

 

また、突然亡くなったのであれば本を読む時間もないです。

そもそも、本を読んで相続について勉強しようという精神状態でない場合も多いでしょう。

 

 

ネット記事は玉石混合

 

ほかには、ネットで「相続 方法」「相続 遺言書」などと検索すれば、相続に関するたくさんの記事が出てきます。

 

もちろん、その中には質の高い記事もありますが、ほかの記事を焼き増ししたような内容の薄い記事も多いです。

 

Googleも万能ではないので、質の高い記事を上位に表示させるとは限らず、記事の中には明らかに実務経験がない人が書いたような記事もあります。

 

そのため、ネット記事は本を読むよりも手軽ではありますが、玉石混合なので質の高い記事にリーチすること自体が難しいといえるでしょう。

 

 

弁護士や司法書士は敷居が高い

 

そして、最後に弁護士や司法書士に相談する…という方法です。最終的には、弁護士や司法書士のような専門家に相談するケースが大半ですが、やはり敷居が高いのも事実です。

 

普通に生活していれば、弁護士や司法書士と触れる機会はほぼなく、特に弁護士は相談料だけで何万円もかかるのでは…と思う人もいるでしょう。

 

だからこそ、まずは身近な「銀行」に相談していただけるのですが、やはり銀行では対応できる範囲に限界があるのも事実です。

 

このような背景もあり、少しでも相続についての正しい知識を得てもらうために、相続に関する実務経験を積んでいるわたしがブログを立ち上げたというわけです。

 

もちろん、弁護士や司法書士の方には、相続の知識面では及びません。

しかし、相続でお悩みの人が一番聞きたいことは、「実際どんなことをすれば良いの?」という点です。

 

この点であれば、逆に弁護士や司法書士の方よりもわたしの方がたくさんのケースを対応しているので、みなさんのお力になれると思います。

 

 

相続で不動産を売却した話

 

さいごに、わたしが相続に関して体験したエピソードを紹介させてください。

このエピソードで言いたいことは、相続の方法によって相続人の方の幸せは変わるということです。

 

 

不動産を相続した息子さんたち

 

今回のお話は、不動産を相続した3人の息子さんの話です。

仮に、Aさん・Bさん・Cさんとさせていただきます。

 

この3人は全員40代の方々であり、それぞれ家庭を持っていました。

小さいころにお母さまを亡くしたことで、お父さま一人で息子さん三人を育てたという家庭です。

 

そんなお父さまが、残念ながらご病気で亡くなられたことがきっかけで、銀行に相談をしにいらっしゃいました。

 

 

仲の悪い息子さんたち

 

そもそも当銀行に相談へ来た理由は、お父様が当銀行をメインバンクにしていたからです。

しかし、話を聞いてみるとお父様は自宅を所有しているため、不動産も相続する必要があるとのこと。

 

息子さんたちは、「父の思い出もあるので残しておきたい」という意向なので、共有で相続する予定でした。

 

しかし、少しだけ対応したわたしの目から見ても、この3人は明らかに仲が悪い様子…。

 

特に、長男のAさんと次男のBさんは目も合わせないので、三男のCさんと主に話をして2人がそれに対して同意をしたり否定をしたりする…という感じでした。

 

 

不動産の売却を促す

 

そんなとき、Cさんから「不動産を共有名義するときに何かデメリットはないか?」と質問を受けました。

 

不動産を共有名義にすると、名義人全員が同意しないと売却や賃貸することができません。

そのため、仲が悪い相続人が共有すると、後々揉めるリスクがあります。

 

もちろん、そんなことをストレートに伝えることはできないので、遠回しに「共有名義だと後々面倒になる可能性がある」ことを伝え、売却するのが最も楽な選択肢である旨も伝えました。

 

わたしの経験上、仲が悪い状態で共有名義にすると将来的に揉める可能性が高いです。

 

しかし、相続のときはお互い顔を合わす機会も多いため、相続時に売却してしまえば比較的スムーズに売却できることを知っていました。

 

 

売却を決意して感謝していただく

 

もちろん、銀行マンのわたしが不動産を仲介することはできません。

 

そのため、実務的には銀行でやるべき手続きだけ案内し、不動産の件は保留のままCさん達はお帰りになりました。

 

そして、後日Cさんから連絡があり、結局お父さまが住んでいた家は売却することにしたようです。

 

悩んだ末ではあったものの、今回の相続を機に兄弟3人で話し合った結果、みんなが納得して売却を決断したとのこと。

 

すでに査定までしており、割と高い金額で売れそう…という話でした。

そして、今回お父さまの家をどうするか三人で話し合ったことで、AさんとBさんの仲も少しは良くなったとのことでした。

 

Cさんからは、そんなキッカケをもらったことを感謝されたので、非常に嬉しく思ったことを今でも覚えています。

 

 

相続の正しい知識を付けよう

 

今回お話したエピソードは一例に過ぎません。

 

しかし、もしあのご兄弟が「不動産を共有名義にすると後々面倒」というデメリットを知らなければ、10年後兄弟間で揉めていたかもしれません。

 

要は、相続に関する正しい知識を付けることで、相続人の方が幸せな選択ができるようになるということです。

 

本ブログはそんな一助になるような記事を書いていきますので、相続でお悩みの方は参考にしてください。